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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

ベートーヴェンも嫉妬した天才作曲家ロッシーニ、「ロッシーニ風」で天才料理人に転身

文=篠崎靖男/指揮者

音楽と食欲の意外な関係

 ところで、フレンチレストランで出されるお皿の上の料理の量はあまり多くないにもかかわらず、大満足で店を後にできるのを不思議に思ったことはありませんか。その理由のひとつとして、BGM効果があるそうです。米ロヨラ大学のロナルド・ミリマン教授の研究によると、「音楽で食欲をコントロールできる」と検証されており、高級フレンチレストランに流れているクラシック音楽のような、静かでゆっくりとした音楽は、少ない量であっても満腹感を与える効果があるそうです。しかも結果的に、痩せる体質に結びつくともいわれています。反対に、たとえばロックのようなテンポが速い音楽を聞いていると、口の中に食物を入れるのが早くなり、その結果、食欲が増し、早食いになって太る体質になってしまうそうです。

 それだけではなく、英オックスフォード大学のチャールズ・スペンス博士の研究では、食べている時に聞いている音の高さによって甘さの感覚が変わることが明らかになりました。同じチョコレートを使った実験では、ヴァイオリンやフルートのような高い音を聞きながら食べると甘めに感じ、チェロのような低い音を聞くと苦めに感じるそうです。つまり、チャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』や、モーツァルトの『フルート協奏曲』を聞きながらお菓子を食べれば、甘味を強く感じるため少量でも満足でき、ダイエットにはお勧めいうことになります。

 こんな話をしていると、ワインソムリエならぬ“BGMソムリエ”がいてもいいのではないかと思いますし、“音楽ダイエット法”もできるような気がします。

(文=篠崎靖男/指揮者)

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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