第三者委にも不信広がる
さらに、東芝の不正会計問題を調べた第三者委員会にも不信が広まっている。
弁護士や大学教授らで構成される第三者委員会報告書格付け委員会は11月26日、東芝の不正会計問題を調べた第三者委員会の報告書について、グループが5段階方式による評価を公表した。「会社からの独立性が乏しく、第三者委報告書とはいえない」との厳しい評価だった。格付けは各委員が個別に合格圏(A~D)と不合格(F)の5段階で評価した。C(比較的悪い)が4人、D(悪い)が1人、F(不合格)は3人だった。
格付け委員長の久保利英明弁護士は「報告書は会社のためにだけ作られ、株主らを視野に入れていない」と酷評。副委員長の国広正弁護士も「第三者委は調査対象や事項を自ら決めるべきなのに、東芝が決めた内容に限った。重要なWHの損失問題と監査法人問題を外した」と批判した。「報告書自体の信頼性は疑問」との指摘もあった。久保利弁護士は「中途半端な報告書は企業に壊滅的な被害をもたらす」と警告した。
監査法人と企業の距離
企業の会計不祥事が起こるたびに、会計士と企業のなれあいが指摘されてきた。
4大監査法人の1つで約40年の歴史を持つ名門だったみすず監査法人(旧中央青山監査法人)が、07年7月31日に解散した。ヤオハン、山一證券、足利銀行、カネボウ、日興コーディアルグループ、三洋電機と、監査先企業の不透明な決算が次々と明らかになり、解体に追い込まれた。
致命傷になったのは、カネボウの粉飾決算だった。金融庁は06年5月、監査体制に重大な不備があったとして、中央青山に業務停止処分を下した。2カ月間、上場企業に対する法定監査業務を停止するという厳しい内容だった。会計監査を担当した中央青山の公認会計士が、カネボウの1999年3月期~03年3月期決算の有価証券報告書に「虚偽記載があるのに、故意に虚偽はないとした行為」に対する処罰だった。
処分を受け中央青山は分裂。法人名をみすず監査法人に変えて再起を目指したが結局、解散に追い込まれた。
東芝の不正会計問題で、金融庁は新日本にどのような処分を下すのか。業務改善命令にとどまるのか、それとも監査業務停止処分にまで踏み込むのか。監査業務停止を受ければ、新日本は存続の危機に立たされることになる。
(文=編集部)