東芝の重要子会社、米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が大きな損失を出していた。「日経ビジネス」(日経BP社/11月16日号)が「東芝、米原発子会社で巨額損失」と報じた。同誌は、東芝経営陣の電子メールのやり取りなど内部資料を入手。WHの単体決算は2012年度と13年度に2年連続で赤字に陥っていたと明かし、東芝はこの事実を認めた。
日経ビジネスは東芝の不正会計問題について広く情報を求めるサイトを開設しており、内部告発が次々と寄せられているという。内部告発がなければ、WHの損失は明らかにならず、東芝は事実を隠し続けていたことだろう。
これまで東芝は、WHの業績を詳細に説明してこなかった。11月7日の土曜日に開かれた15年9月期中間決算の発表でも、平田政善CFO(最高財務責任者)は「(原発事業は)世界的に冷え込んでいるように見えるが、サービス(保守点検)や燃料事業は増えている」と述べ、「原発事業は順調に推移している」と従来の主張を繰り返した。
株式市場では「WH関連の資産価値を大幅に引き下げ、東芝は巨額の損失を計上することになるだろう」と見ていた。だが、東芝は「新規建設以外の原発事業は順調」として、WHの資産価値を下げていなかった。WHの巨額赤字報道に「やっぱり」と考える市場関係者は多い。
東証の開示義務違反
東京証券取引所から「情報開示に不備があり、内容を公表すべきだ」との指摘を受けた東芝は11月17日、WHの減損損失を正式に公表した。12年度と13年度の2年間の損失合計は計13億ドル(約1158億円)に上った。WHは12年度決算において原発事業で762億円の減損を計上した。内訳は、新規建設で557億円、原発の監視制御システムの保守を担うオートメーション関連で205億円だ。
11年の東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、原発関連の受注は苦戦を強いられている。買収した企業のブランド価値である「のれん代」が下がるのは当然の成り行きで、今回損失処理の公表に追い込まれたわけだ。13年度は新規建設で394億円の損失を計上した。
子会社が大きな損失を出せば親会社の経営に影響し、株価が下がる。このため東証は、子会社の損失が親会社の連結純資産の3%以上になる場合、迅速な情報の開示を求めている。
東芝の11年度連結純資産は、不正会計問題による訂正前で1兆2302億円だった。これに対してWHグループの12年度の減損損失は762億円。前年度純資産の6%に相当する。当然、開示の義務があった。