発表によると、06年度の買収以来、WH単体の営業損益の累計は2.9億ドル(約354億円)の赤字。減損を実施した12年度に8.6億ドル、13年度に5.7億ドルの損失を計上したことが響いた。
連結決算を減損しなかったことについて、同席した志賀重範副社長は「減損テストは適切に行われている。ルールに従っているので、意図的な結果ではない。原子力事業全体としてはビジネスが順調に進んでいる」と、これまでの主張を繰り返した。
14年度以降、WH単体としてではなく、東芝グループの原子力事業として国内外一体に変更して、のれん代を算出している。減損テストの詳細については、各事業が持つ価値を帳簿上の価格である簿価と業績などを反映した時価とを比較し、時価が簿価を下回った場合に企業のブランド価値を示すのれん代を見直し、減損処理を行うと説明した。
WHは12、13年度に損失を計上したものの、東芝全体の原発事業は両年度とも原発燃料の製造・販売や保守・点検事業が好調で、減損を回避したと釈明した。原発事業全体の評価額が13年3月期は7616億円、14年3月期は6669億円と、初めて具体的な数値を明らかにした。
さらに、原発事業の将来計画も公表。16年3月期には営業黒字に転換して利益を伸ばし、19年3月期から12年間の年平均の営業利益は1500億円に膨らむとした。WHが米国やインドなどで計64基を受注・建設する見通しがあるからだという。
差し迫った問題は、来年1~2月に予定しているWHの減損テストだ。WHの減損によって、東芝本体の資本が毀損する恐れが強まるだろう。
東芝株は不正会計問題の影響で、東証から「特設注意市場銘柄」に指定されていることから、増資や社債発行による市場からの資金調達は難しい。室町社長は株式資本が毀損するリスクの対応策として、「フラッシュメモリを中心とする半導体事業を分社化して、IPO(新規株式公開)を検討する」と踏み込んだ発言をした。半導体事業は室町社長の“天領”だが、原子力は門外漢。64基を新規に受注するという計画が実現可能かどうか、社長として踏み込んだ検証をする必要がある。同席したWHのロデリック社長は「世界中で原子力の需要が高まる」と語ったが、その一方で「WHはやるべきことをやった」としており、WHの減損を開示しなかったのは東芝の判断だったことを示唆した。
「東芝がWHを十分にコントロールしているようには、とても見えない」(業界筋)
東芝は、いよいよ追い込まれてきた。
(文=編集部)