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「値上げの許容範囲を超えた」大戸屋、連続客数減地獄で危険信号…復活は困難かもしれない

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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 大戸屋はこれまで値上げを繰り返し実施しており、許容範囲を超えているといえるだろう。現在、定食のグランドメニューはほとんど800円以上となっており、1000円を超えるものも少なくない。定食店のなかでは高いほうだ。また、大戸屋ランチを10月から復活販売しているが、790円に値上げしており、お手頃感はすっかりなくなっている。

 値上げを回避するにはコスト削減が欠かせない。外食チェーンの場合、店舗網拡大で生まれるスケールメリットによるコスト削減が大きな威力を発揮する。店舗網の拡大による大量仕入れ・大量販売により食材費の低減が期待できるほか、本社や工場にかかるコストなど固定的なコストの割合の低減につながるためだ。

 だが、ここ数年、国内店舗数は350店あたりで横ばいで推移している。スケールメリットを生かしたコスト削減がしづらい状況になっているのだ。

 ただ、「牛角」や「かっぱ寿司」などを傘下に収める外食大手のコロワイドから10月に出資を受けたため、これをきっかけに共同仕入れを行うなどコロワイドから支援を受けられる可能性もあり、スケールメリットを生かしたコスト削減が期待できるだろう。

 一方で、店舗運営におけるコスト削減も欠かせない。作業の従業員への割り当ての効率化や無駄な作業の削減といった地道な方法から、IT(情報技術)やロボットなど先端技術を活用した方法まで、あらゆる手法を検討・駆使してコスト削減を図っていく必要がある。

バイトテロの甚大な被害

 大戸屋における客離れは価格の高さが大きな要因だが、今年2月に世間を賑わせた「バイトテロ」の影響も大きいだろう。アルバイト従業員が店舗内で配膳用のトレーで裸の下半身を覆う様子が映った動画がインターネット上で確認され、それにより当該従業員はもちろん、大戸屋も世間の批判を浴びた。それも客離れにつながった。

 このバイトテロが世間に広く知れ渡った2月は、客数が前年同月比6.4%減と大きく落ち込んだ。翌3月は、再発防止に向けた従業員教育のために店舗の休業を実施したこともあり、10.8%減と大幅減となった。こうしたことから、バイトテロによるイメージ低下の影響が、客数減に少なからず影響したと考えるべきだろう。

 バイトテロが起きた月の客数が大きく減った外食チェーンは大戸屋だけではない。回転ずしチェーンの「くら寿司」でも同様の事象が起きている。

 くら寿司は、アルバイト従業員が食材の魚をゴミ箱に捨てた後にその魚をまな板に戻して調理しようとする様子が映った動画がネット上で拡散し、世間から批判を浴びるというバイトテロに見舞われた。このバイトテロが世間を賑わせた2月の客数は6.1%減、翌3月が5.2%減と大きく落ち込んでいる。バイトテロによりイメージが低下し、客足が遠のいたといえるだろう。

 近年は商品の均質化が進んでいるため、商品以外の要素の重要性が相対的に高まっている。なかでも、「イメージの良さ」がより重要になっている。

「骨肉の争い」を演じた大塚家具や、「ブラック企業」との批判を受けたワタミがイメージ低下により消費者から敬遠されるようになって業績が悪化したが、これらはイメージの重要性を物語る典型例といえるだろう。今の時代は、イメージが良くなければ消費者から選ばれにくくなっており、それは大戸屋やくら寿司も例外ではない。大戸屋もバイトテロによりイメージが低下し客離れが起きたといっていいだろう。

 いずれにせよ大戸屋は19年4~9月期に営業赤字に陥る見込みで、抜本的な対策を早急に講じることが求められている。まずはコロワイドと協業できるかが焦点となりそうだが、動向を注視していきたい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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