定食店「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングス(HD)は11月5日、2019年4~9月期の連結業績を発表した。本業のもうけを示す営業損益が1億9000万円の赤字に転落する。従来予想は4000万円の黒字を見込んでいた。中間決算に営業赤字になるのは01年に店頭市場に登録、現在のジャスダック上場以来初めて。
客離れで既存店売上高が低迷し、連結業績の下方修正を余儀なくされた。売上高は従来予想から7億円引き下げて123億円とした。最終損益は1000万円の黒字を見込んでいたが、一転して1億 8000万円の赤字に転落する。
同社は下方修正の理由として、4月にメニュー改定を実施したが売り上げが計画に届かなかったことや、既存店客数の回復が遅れていることなどを挙げた。
合わせて20年3月期通期の連結業績予想も下方修正した。売上高は従来予想の275億円を250億円に見直した。営業損益は4億8000万円の黒字からゼロに、最終損益は2億9000万円の黒字からゼロに、それぞれ下方修正した。
同社は4月23日のメニュー改定を機に、定食メニューのうち12品目を10~70円値上げした。「しまほっけの炭火焼き定食」を70円引き上げて1040円(税込み、以下同)にしたほか、「ロースかつ定食」を40円値上げし950円にするなどした。こうした値上げが敬遠され、客離れが起きた。
4月以降の客数は大きく落ち込んでいる。4月は前年同月比8.0%減、5月が6.4%減だった。4~9月はすべての月がマイナスで、マイナス幅は各月4~8%と大幅減が続いている。
値上げが客数減につながったわけだが、安価で人気があった「大戸屋ランチ」(720円) をなくしたことも大きく影響したとみられる。同商品は、4月の改定後のメニュー表からは消えていたのだ。
代わりとしてか、新たに「大戸屋おうちごはん定食」(870円)を売り出している。だが、同商品は大戸屋ランチの竜田揚げを肉団子に代えただけにすぎない。それ以外の食材に大きな違いはないのだ。それにもかかわらず、大戸屋ランチより150円も高い。これに対してネットでは不満の声で満ち溢れた。
値上げと大戸屋ランチの廃止で「大戸屋は高い」というイメージが定着してしまった。こうした価格帯の引き上げで4~9月期の既存店の客単価は前年同期比1.6%増と伸びたものの、客数が6.5%減と大きく落ち込み、売上高は5.0%減と沈んだ。
コスト上昇への対応
近年は外食店において食材費や人件費などコスト上昇が頭痛のタネとなっている。コスト上昇を吸収できなければ、値上げで対応せざるを得ない。だが、外食チェーンは需要の価格弾力性が大きくなりがちなため、少しの値上げでも需要は大きく減少してしまう。
需要の価格弾力性とは、価格変化に対して需要がどの程度の割合で増減するかを示す概念だが、ほかで代替しやすい商品ほど需要の価格弾力性が大きくなりやすい。
外食チェーンはほかで代替しやすい商品を扱うことが多いので、需要の価格弾力性は大きくなりやすい。大戸屋は店内で調理をするなど手間暇かけて商品をつくるなどして「おいしい」との評判を得ているため、外食チェーンのなかでは需要の価格弾力性は小さいほうだろう。ただ、価格の高さに対する許容範囲は当然存在する。