長年働いても、スキルの向上などが望めない外食産業やコンビニエンスストアでは、外国人のスタッフを多く目にします。特に激安の居酒屋では中国やベトナム、韓国などの店員が目につきます。日本人が働いている姿はあまり見かけなくなっています。
なぜでしょうか。
日本の若者のなかで、「自分が成長できない職場では働きたくない」と考え、そのような場で働くことを拒否する割合が増えているからなのです。こうした動きは、ここ5~6年で顕著になってきています。
日本では長い間、団体行動を取ることを良しとする教育が行われてきました。個性を出すことは好まれず、“出る杭は打たれる”と教わってきました。制服やランドセルの色なども皆一緒でした。つまり、私たちは長年の間、「人と同じことをしなさい」と教えられてきたのです。ある一定以上の年齢の方は、ラジオ体操の音楽がかかれば一糸乱れず体操ができるのが教育の成果でした。
しかし、昨今の日本は個性教育が重要視されるようになっています。その教育を受けてきた若者にとって、“誰でもできる仕事”は避けるべき存在になりました。ランドセルの色も自由になった現代において、激安の飲食店やスーパーで働こうとする若者はどんどん減っていったのです。彼らは、「自分が成長できる仕事に就きたい」と考えるようになりました。
若者がスタバで働きたがるワケ
そのことを象徴する例をひとつ紹介します。
スターバックスコーヒーでは、どのような人が働いているでしょうか。店内を見渡すと、日本人の若者が多いことに気づきます。
スターバックスで「今日のお勧めはなんですか?」と聞けば、イチオシのコーヒーについて、そのテイストを丁寧に説明してくれます。お客さんの難しいリクエストにも、ちゃんと応え、いろいろな種類のコーヒーをテキパキとつくっています。
このような作業をスムーズに行うためには、コーヒーに対する知識とスキルが必要です。スターバックスでは、そうしたスキルを向上させる仕組みがしっかり整えられています。学生アルバイトも正社員も関係なく、のべ80時間の研修を行っているのがその象徴といえます。だからこそ、多くの日本の若者がスターバックスで働こうとするのです。
このように、教育システムが整っているなど「自分が成長できるところで働きたい」と考える若者が多くなっています。人材難に直面している企業も多いと思いますが、「人が集まらない」と嘆く前に、働く人の立場から職場環境を考えることが必要なのではないでしょうか。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)