早期の原因究明に自信を持つ米ボーイングは、月10機への生産倍増計画も予定通り進める予定だが、FAAによる運航停止のため、在庫が膨らむ可能性があるという。実際、日経新聞の取材によれば、米ボーイングの生産拠点である米国シアトル郊外のエバレット工場の敷地には、全日本航空や日本航空など各航空会社の装飾が施された機体が、すでに10機以上並べられているという。
787は、従来の航空機生産と大きく異なる。
例えば、大型機777の生産ラインは、サッカー場数個分もある工場内を、平均で分速2インチで少しずつ動きながら、機体の横に次々と台車に乗った部品が供給され、組み立てられていく。いわゆる「カンバン方式」で、1990年代にトヨタ自動車の専門家を招き、取り入れられたものだ。
一方の787の生産ラインでは、直線に並ぶ生産ラインはわずか4工程。前半の2工程で航空機の原形になり、あとはエンジンや電気系統を取り付けるだけ。機体の周囲にはデスクとパソコンが並び、部品はシートなどが少量あるだけで、工員ではなく数百人のエンジニアが陣取り作業している。
787の生産の大きな特徴は、機体を部品毎に生産する「モジュール生産」を採用している点だ。例えば日本国内では、三菱重工業、川崎重工業、富士重工業などのパートナーが、機体生産の約35%を行う。世界8カ国での国際分業体制を敷くことで、エバレット工場での組み立ては最小限に控えられている。
今回、この生産方式が、FAAなどが主導する原因究明調査を遅らせている原因になっている。
例えば、発火事故などとのかかわりが指摘される電気系統では、日本のジーエス・ユアサコーポレーションが生産したリチウムイオン電池が仏タレスの供給され、タレスが電源モジュールとして組み立てたものが、ボーイングのエバレット工場に運びこまれる。
こうした世界に広がるサプライチェーンの調査は容易ではなく、原因究明に向けた調査の長期化が予想されるという。
(文=編集部)