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前田の“親子げんか”…なぜ前田建設は前田道路に敵対的TOBを仕掛けたのか?

文=編集部
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「前田建設 HP」より

 準大手ゼネコンの前田建設工業が道路大手、前田道路に対して敵対的TOB(株式公開買い付け)を始めた。前田道路の株式の51%取得を上限に株式の取得を目指す。

 今流行の「親子上場解消」ではない。前田建設のTOBに前田道路が猛反発し、親子げんかに発展した。前田建設は前田道路の筆頭株主で、前田道路を持ち分法適用会社にしている。1月20日、持ち株比率で24.38%(19年9月末現在、自己株式除く)を保有する前田道路を連結子会社にすると発表した。前田道路株のTOB価格は1株3950円。前週末の17日の終値を5割上回る。買い付け期間は1月21日から3月4日まで。買い付けの上限は2181万1300株。発行済み株式数の51%を目指す。道路舗装事業の強化が目的だ。

 これに対して、前田道路は「前田建設が保有する自社株すべてを買い取り、資本提携を解消する」提案をすることを決議した。資本提携を解消するのは「事業のシナジーが見込めないほか、経営の独立性を確保するため」とした。PBR(株価純資産倍率)などの指標が前田建設より高いことにも触れ、TOBが成立すれば「資本市場からの評価がより乏しい企業によって経営されることになる」と主張した。前田道路の反対表明で前田建設のTOBは、一転、敵対的なものとなった。前田道路の1月17日の終値は2633円。21日には昨年来高値の3835円まで急騰。その後もTOB価格(3950円)をにらんだ水準で推移している。

 もとをただせば、前田道路は前田建設の子会社ではなかった。1930年設立のアスファルト舗装工事の草分けである高野組(その後、高野建設に商号変更)。62年12月、会社更生法を申請した際、事業管財人に就任したのが前田建設だった。更生手続きは終結。68年に高野建設から前田道路に社名を変えた。

香港の「物言う株主」オアシスが両社の株主として登場

 前田建設と前田道路が親子げんかに発展したのは、物言う株主であるアクティビストの存在が大きい、との指摘がある。香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントは両社の株式を5%未満ずつ保有する。

 オアシスは2017年、パナソニックによるパナホームの完全子会社化の際に、買収価格の実質的な引き上げを勝ち取った。18年にはアルプス電気によるアルパイン買収の条件に反対を表明したが、株主総会で否決された。

 オアシスは19年5月、日本に集中投資する新ファンドを立ち上げ、建設株をターゲットにした。安藤ハザマに対しては工事現場で重大事故が繰り返し発生しているとして「安全管理の徹底を定款に定めるよう」株主提案をしたが否決された。

 前田建設と前田道路の株式を5%未満ずつ保有してからは、前田建設に前田道路との資本関係の見直しを求め、前田道路には株主還元などを要求した。前田道路は前田建設によるTOBに反対する文書で、「昨年12月4日、『アクティビストによる前田道路へのTOBを阻止する』との理由で前田建設からTOBの提案があった」ことを明らかにした。

 前田道路は、「オアシスが買収に動いているというのは、子会社にしたいための口実」と受け止めた。前田道路は有利子負債がなく、現預金と有価証券が合計888億円(19年9月末時点)もあるキャッシュリッチ企業だ。オアシスが前田道路に株主還元を要求しているのは、このキャッシュがお目当てだ。「前田建設の創業家出身の前田操治社長は、公開買い付け開始後、メディアに対し『買い付けとアクティビストとの関連はない』と述べるなど、明らかに虚偽の説明を行なっている」と非難した。

英シルチェスターは道路に建設との資本提携解消を求める

 英資産運用会社、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは前田道路株の10.79%を保有(ノーザントラストカンパニー名義、19年9月末時点)し、10年以上にわたって「前田建設との資本関係を解消したほうが、前田道路の企業価値は上がる」と指摘してきたという。昨年10月にも同様の提案をしたが、前田道路は「前田建設のTOBを誘発しかねない」と、完全に腰が引けていた。

 前田道路の今枝良三社長は、ロイター(1月29日付)とのインタビューで、TOBへの対抗策として、「友好的な第三者であるホワイトナイト(白馬の騎士)も選択肢のひとつだ」と述べた。白馬の騎士の候補は事業会社もファンドもあり、「ファンドのほうが多い」とした。ホワイトナイトには、「前田道路の経営の独自性が守られること」を最優先とし、「資産の切り売りや社員の士気の低下につながるようなリストラは行わないこと」を求めていく。

 前田道路は強力なホワイトナイトを見つけ、TOB合戦に持ち込むことができるのか。前田建設のTOBには下限が設けられていないことから、株価の推移にもよるが、現状より前田建設の保有比率が高まることは確実と見られている。事前調整で事を荒立てないように進めるのがゼネコン業界のいわば常識。親子げんかが表面化するのは極めて珍しい。どう決着がつくのだろうか。

(文=編集部)

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