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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

世界の工場・中国、なぜ技術者が育たない?判断要する開発やチームワークが無理、サボる

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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サイノキングテクノロジー設立

 日本で唯一のDRAM(半導体メモリ)メーカーだったエルピーダメモリは、2012年2月に経営破綻した。そのときCEO(最高経営責任者)だった坂本幸雄氏は、その思いを著書『不本意な敗戦』(日本経済新聞社)にして出版した(図1)。その坂本氏が、昨年新たにDRAMの設計開発会社、サイノキングテクノロジー(以下、サイノキング)を設立した。同社のHPには、「サイノ=中国の、キング=王、つまり『中国で圧倒的に優れたDRAMを作っていきたい』というコンセプトのもとに生まれた会社」であると記載されている。

 また、サイノキングは日本と台湾で計約二百数十名の技術者を採用し、このメンバーの経験と技術力を核として、17年中には日本、台湾、中国で計1000人規模の技術者を有するメモリ開発会社にする計画であるという。

 さらに、サイノキングは中国安徽省合肥市の地方政府が進める約8000億円をかけた先端半導体工場プロジェクトに中核企業として参画する。その際、サイノキングが次世代メモリを設計し、生産技術を供与する。

 その第一弾として、あらゆるものがネットワークにつながる「IoT(モノとインターネットの融合)」分野に欠かせない省電力DRAMを設計開発し、早ければ17年後半に量産することを目指しているとのことだ。

 つまり、一旦DRAMで「不本意な敗戦」を喫した坂本氏が、日本と台湾の技術を基に、中国の資本を利用してDRAM事業に再挑戦するということである。

 本稿では、サイノキングのビジネスの特徴を明確にするとともに、その期待と課題を論じたい。

初のDRAM専門のファブレス

 スマートフォン(スマホ)用のプロセッサやデジタル家電用の半導体SoC(System on Chip)では、半導体の設計をファブレス(工場を持たない半導体メーカー)が行い、その製造をファンドリー(受託製造会社)が行うこと、つまり水平分業が定着している。

 ところが、世界を見渡してみても、メモリの水平分業が行われたことはいまだにないと思う。メモリは少品種大量生産が基本であるから、ファブレス&ファンドリーモデルには適さず、設計、開発、製造をすべて1社で行う垂直統合型に向いていると思われていたからだろう。

 しかし実際には、サーバー用、PC用、スマホ用をはじめ、さまざまな用途に対応するDRAMが必要である。そのため、本来はその用途ごとに設計し、プロセス開発を行うべきであるが、今までDRAM専門のファブレスは存在しなかった。

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