アサヒビール社長だった小路明善氏が、3月24日付で持ち株会社のアサヒグループホールディングス(GHD)の社長兼最高執行責任者(COO)に就任した。前社長の泉谷直木氏は代表権のある会長に就き、最高経営責任者(CEO)を続ける。アサヒビール社長には副社長だった平野伸一氏が3月18日付で昇格した。
アサヒGHDは、国内ビール市場のメーカー別シェア(市場占有率)で首位を走る。しかし、売上高に占める海外比率は1割強にとどまり、3割のキリンホールディングス(HD)やサントリーホールディングス(HD)と比べ出遅れている。ビール業界の世界的な再編が加速するなか、小路新社長はM&A(合併・買収)を柱に据えた海外事業の拡大を急ぐ。
3297億円で欧州ビール4社を買収
アサヒGHDは2月9日、英ビール大手SABミラー傘下の欧州ビール事業の4社を買収することで合意した。買収額は25億5000万ユーロ(約3297億円)で、海外事業を強化する足がかりをつかんだ。
ビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インべブ(ベルギー)が2位の英SABミラーを買収することで合意したため、世界シェアの3割を握る巨人が誕生する。グローバル市場ではすでに勝負がついた。
だが、大手の間隙を縫うアサヒに欧州事業拡大のチャンスが訪れた。巨大企業ができることによって、高いシェアを占める地域は独占禁止法に抵触する。そこで事業を売却することになったからだ。
アサヒGHDが買収するのは欧州拠点の下記4社だ。
(1)イタリア・ビール製造会社のペローニ。イタリア国内では17.4%のトップシェアを持つ。15年3月期の売上高は449億円、営業利益は32億円。
(2)オランダ・ビール製造会社のグロルシュ。オランダでのシェアは13.0%で3位。15年3月期の売上高は383億円、営業利益は24億円。
(3)英クラフトビール製造会社のミーンタイム。14年12月期の売上高は28億円、営業利益は2億円。
(4)英ビール輸入会社のミラーブランズ。15年3月期の売上高は435億円、営業利益は52億円。
4社合計の売上高は1295億円、営業利益は110億円に上る。アサヒGHDは年内に4社を傘下に収める予定だ。来期から、これら各社の決算が連結決算に上乗せされる。