何が流通の神様・鈴木敏文を狂わせた?セブン&アイ、訴訟続出と経営混乱で崩壊の始まりか
本部とコンビニオーナー、セブンと取引先…変わる関係性
ただし、ここ数年はオーナーから訴訟を起こされる事案がたびたび見られ、その関係性に変化が生じている。たとえば、賞味期限切れで廃棄される商品にまで本部に対してのロイヤルティーがかけられているのは違法だとして提訴された「廃棄ロス訴訟」、消費期限が迫った弁当などの割引販売をしないように本部が圧力をかけているのは不当だとして提訴された「見切り販売訴訟」、本部と仕入れ先のリベートを追及する「ピンハネ訴訟」など、数十件に及ぶ訴訟が起こされた。
今年の節分、ツイッター上で拡散された「恵方巻大量廃棄」問題も、徹底力と裏腹なノルマ強制が背景にあるといわれている。
昨年、過労やパワハラなど雇用関連問題を多く抱えた企業を選定する「ブラック企業大賞」において大賞を受賞したのは、その証左だったのだろう。
また、セブンに納品するナショナルブランド(NB)商品を展開する複数のメーカーに話を聞くと、今回の退任については複雑な思いを抱いているようだ。
圧倒的な店舗網と徹底力を持つセブンはメーカーの売り上げに大きく貢献するが、一方でメーカーが持つナショナルブランドの「セブン限定商品」の開発を強要されるなど、非常にデリケートな対応を迫られるケースが多い。
ほかにも、大手容器メーカーの営業担当者は、「新しい技術を提案すると、セブン限定で展開せざるを得なくなり、拡がりを持てなくなるので提案を控えている」と打ち明ける。
取締役兼常務執行役員商品本部長・鎌田靖氏が執行役員オペレーション本部付へ降格させられた年頭の人事について、メーカーとの関係が変化しつつある兆しとみる向きもある。
世襲人事が鈴木会長辞任の遠因?
鈴木会長は、セブン成功の象徴というイメージが強いが、総合スーパー(GMS)再建は達成できず、百貨店や通販事業の立て直しも道半ばであった。
今回の社長交替人事問題の遠因と指摘されているもののひとつに、セブン&アイ・ホールディングス(HD)取締役で鈴木会長の次男・鈴木康弘氏への世襲問題がある。
康弘氏が進めるオムニチャネル戦略は、GMS立て直しのキーファクターと位置づけられている。実店舗やオンラインストアをはじめとする販売チャネルや流通チャネルを統合するオムニチャネル戦略は、利益を出すまでには時間がかかる事業であるため、今回のトップダウンで事業を進める鈴木会長の辞任は、今後のオムニチャネル戦略はもとより、超高齢化の進む日本の流通小売業の先行きに大きな影響を与えるかもしれない。