ビジネスジャーナル > 企業ニュース > ディズニー客離れ深刻
NEW

ディズニーリゾート、客離れ深刻…アトラクション「飽き飽き感」で顧客満足度低下か

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
ディズニーリゾート、客離れ深刻…アトラクション「飽き飽き感」で顧客満足度低下かの画像1東京ディズニーリゾート(「Wikipedia」より/mekarabeam)

 東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドは4月27日、2016年3月期のテーマパーク事業(東京ディズニーランド、東京ディズニーシーなど)の売上高が前年同期比0.8%減の3846億円、本業の儲けを示す営業利益が2.9%減の1073億円と発表した。

 減収減益となった要因は、15年度の入園者数が3.8%減の3019万1000人と、4年ぶりに前年度を下回ったためだ。入園者数の減少は、15年4月に実施したチケット価格の値上げの影響が大きいだろう。「1デーパスポート」は大人6400円を6900円に、中学・高校生5500円を6000円、幼児・小学生4200円を4500円にそれぞれ値上げした。ちなみに、今年4月にもさらなる値上げを実施している。

 値上げによる入園者数の減少は織り込み済みだったと思われるが、1人当たりの売上高の上昇が予想に追いつかなかったため減収となっている。値上げに拒否反応を示した人も少なくないはずだ。回復基調にあった消費者の消費支出は、14年4月に実施された消費税増税により鈍化傾向にある。増税に加えての値上げとなり、消費者の負担感は大きく増したといえる。ユニクロなど、増税後の値上げで業績悪化となった企業も少なくない。今の消費者は価格に対して非常に敏感だ。

 とはいえ、TDRはユニクロなどの低価格を志向する企業とは異なり、高付加価値サービスを提供する企業のため、値上げに対する消費者の許容度はある程度高いといえる。値上げをしても、その価格に見合った価値を提供できれば問題はないはずだ。客数が減少しても、客単価の上昇でカバーできるからだ。しかし、売上高が減少したということは、以前との比較で価格に見合った価値を提供できなかったと考えることができる。

東京ディズニーリゾートの顧客満足度低下の原因

 TDRの付加価値の低下を示すものとして、法政大学経営大学院教授の小川孔輔氏が寄稿した1月6日付「YOMIURI ONLINE」記事『「夢の国」東京ディズニーリゾートに異変の兆し』がある。

 同記事では、次のようにTDRの顧客満足度が低下していると指摘している。

「サービス産業生産性協議会が実施している『日本版顧客満足度指数(JCSI)』という日本の小売サービス業32業種・上位企業約400社を対象にした日本最大規模の消費者調査がある。筆者も改善・運営委員会の座長として関わるこの調査で、顧客満足度(CS)上位企業のランキングに変化が起こった。2009年以来、劇団四季とトップを争ってきたTDRが、あくまで暫定値ではあるが、トップ10位のリストから外れてしまった」

 顧客満足度に大きく影響しているとみられる付加価値の低下について、別の視点から考察してみたい。TDRのテーマパーク事業は、基本的にアトラクションの魅力に大きく影響されると考えられる。「ミッキーマウスが好き」「ショーが好き」といった理由でTDRを訪れる人もいるだろうが、スペース・マウンテンやビッグサンダー・マウンテンといった魅力的なアトラクションが来場の主な目的だろう。付加価値はアトラクションの魅力と強い因果関係があるといえる。

 オリエンタルランドは、TDRのアトラクションなどに年平均で500億円レベルの投資を行っている。定期的に新しいアトラクションを投入することで顧客を飽きさせないようにしている。新しいアトラクションを目当てとするリピーターを増やす戦略だ。

アトラクションの売り上げへの貢献度

 ここで、「有形固定資産回転率」という経営指標に注目したい。これは有形固定資産と売上高の比率で、構造物や建物といった固定資産がどれだけ売上高に結びついているのかを表す。TDRではアトラクションなどがどれだけ売上高に結びついているのかを表す数値と考えることができる。

 有形固定資産回転率では、数値は高いほど良い。オリエンタルランドの直近10年の有形固定資産回転率を見てみると、06〜12年度は0.64~0.87回で推移し上昇傾向にあった。13年度はTDRが30周年を迎えたこともあり、1.08回に上昇した。14年度は1.07回、15年度は1.06回となっている。13年度からは緩やかながらも下降している。

 この結果から、アトラクションなどが生み出す付加価値の頭打ち感が見て取れる。年平均で500億円レベルの投資が以前のような付加価値を生み出せなくなっているのだ。このことが顧客満足度の低下につながっているのかもしれない。

 今回の決算では減収減益という結果となったが、売上高及び営業利益は過去3番目という高い水準にある。入園者数は3期連続で3000万人を超えている。また、16年3月期末の現金及び預金は2091億円と豊富な資金力を誇る。長期借入金(1年内返済予定含む)つまり借金は70億円と極めて少ない。良好な経営状態にあるといっていい。

 これは、訪日外国人の増加が追い風になっている。15年度の入園者数に占める海外からの入園者数の割合は6.0%で、増加傾向にあるという。日本政府観光局によると、15年の訪日外客数が1973万7000人と過去最高を記録している。政府は東京オリンピックの開催が予定されている20年に4000万人、30年に6000万人を目標としている。成田空港に近いTDRにとって訪日外国人の増加は大きな追い風となるだろう。

 外国人客の増加、高水準での入園者数に対して、顧客満足度を下げずに高い付加価値を提供し続けることができるのか。TDRの真価が問われる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

ディズニーリゾート、客離れ深刻…アトラクション「飽き飽き感」で顧客満足度低下かのページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!