永田町は7月10日投開票の参議院選挙一色に染まっている。アベノミクスの継続を訴える安倍晋三首相は地方創生を打ち出し、「地方、中小企業、個人へのアベノミクスの波及」を力説する。
その一翼を担うのが地方金融機関であり、信用金庫業界は中小企業金融の中心的な担い手にほかならない。「選挙が近づけば中小企業金融はホットな政治テーマとなる。信金業界には政策と票の両面で期待する」(与党幹部)というわけだ。その信金業界のトップ人事に今、注目が集まっている。
「多摩信用金庫の佐藤浩二会長の政治力には舌を巻く。自身が全国信用金庫協会(全信協)の会長職を射止めただけでなく、古巣の東京都信用金庫協会(東信協)の次期会長に、佐藤氏の息のかかった昭和信用金庫の神保和彦理事長を据える離れ技をやってのけた。事実上の後継指名人事と言っていい」(都内信金幹部)
多摩信金の佐藤会長の全信協会長就任が決まったのは4月27日、6月の通常総会を待って正式就任する。だが、佐藤氏の会長決定までには紆余曲折があった。
「東京地区の有力信金トップが会長に就く慣例を破ろうと、東海地区の有力信金トップが会長職に意欲を示していたが、根回し上手な佐藤氏が選考委員会のメンバーを口説いて、多数決で会長職を射止めた」(同)
また、見逃せないことに、信金業界の実力者で勇退を公言していた前会長の大前孝治氏(城北信金会長)を理事・名誉会長に据える配慮も忘れなかった。大前氏は後任会長には東京地区の信金が就くべきとの思いが強かったという。
自らの全信協会長就任が決まった佐藤氏は、取って返す刀で、それまで会長を務めていた東信協の次期会長人事の根回しに動いた。本来中立を保つべき同協会の事務局も佐藤氏をバックアップしたようだ。
老練な信金経営者の深慮遠謀
しかし、都内有力信金の理事長のなかには、プレミアム商品券をめぐる不祥事などコンプライアンス上の問題が指摘されている多摩信金の佐藤会長が、東信協の会長人事に介入することに反発する声や、佐藤会長時代に進んだ東信協の機能低下を懸念する声が強く、選出は僅差の票決となった。