京浜急行電鉄は、本社を東京都港区から神奈川県横浜市へ移転する。
横浜市は2015年8月から西区のみなとみらい(MM)21地区の市有地について開発事業者を募集していたが、京急の本社移転、清水建設による賃貸オフィスビル建設、横浜アンパンマンこどもミュージアム&モール移転の3つの事業を決めた。
京急の新社屋は地上15階地下2階建てで、延べ床面積2万3000平方メートル。土地は30億円で横浜市から取得し、建設費は80~90億円を見込む。現在の本社に勤務する1800人のうち1200人を19年秋から新社屋に移動させ、グループ企業も10社程度新しい本社に集約する。
横浜市への本社移転には狙いがある。横浜市が前向きな姿勢を示している統合型リゾート(IR)への参画だ。政府は20年の東京オリンピック・パラリンピックまでにカジノなどを開業する場合には、横浜の山下公園の隣の山下埠頭(50ヘクタール)を最有力の候補地として挙げている。
京急は14年8月、カジノやホテルなどで構成するIR構想を打ち出した。不動産や飲食、ホテルなどの国内企業に働きかけ、企業連合を立ち上げる。その企業連合が5000~6000億円を投資する予定だ。
京急は羽田空港や横浜駅から直行バスを運行して訪日観光客を呼び込む。宿泊施設や商業施設などで1万人規模の新規雇用の創出が期待できると皮算用している。これが、京急が描くカジノ構想の全容だ。
原田一之社長が横浜商工会議所のIRに関するワーキンググループの座長に就くなど、熱が入っている。
上場以来、初の赤字転落
京急の16年3月期連結決算は赤字だった。売上高にあたる営業収益は前期比1%減の3132億円、営業利益は45%減の148億円(15年3月期は267億円)、最終損益は30億円の赤字(同107億円の黒字)となった。
本業の鉄道は好調で、訪日客の増加で羽田空港と都心を結ぶ路線の利用客が増え、運賃収入は786億円と過去最高を記録した。それでは、なぜ赤字に陥ったのか。三浦半島を住宅地として整備し、鉄道によって沿線の住民を横浜、東京に送りこむことを考えてきたが、三浦半島の人口の減少が始まり、この事業そのものを見直した。
具体的には、三浦半島での久里浜線の延伸と大規模宅地開発計画を凍結。150億円の土地の評価損と減損損失30億円を計上した。この結果、1949年の株式上場以来初めて30億円の赤字に転落した。