ヒカリエから世界へ
上場を控えたメッセージアプリのLINEには、日本ではほとんど知られていない秘密がある。それは表向きに知られている東京のオフィスタワーにある本社とは、また別に、韓国側にも“もう一つの本社”があるということだ。
今年7月、いまや日本人の国民的アプリになっているLINEは、日本と米国で同時上場をする。すでにカウントダウン態勢に入っており、その時価総額は約5800億円に上ると見られている。今年、東京証券取引所にて株式上場する“目玉企業”の一つになる。
韓国のインターネット検索大手ネイバーの100%子会社である、ネイバージャパン(当時)がLINEを生み出したのは2011年6月のこと。東日本大震災においては電話回線がなかなか通じず、被災者たちは家族や友人への連絡もままならなかったことから、大切な人同士をつなぐためのアプリとして開発されたという「物語」はあまりにも有名だ。
あれから約5年、あの可愛らしいスタンプで知られるLINEは、日本や台湾、タイなどアジアを中心にして約2億1860万人のユーザーを抱えるまでに成長した。上場によって、いよいよ、日本経済の晴れ舞台にあがろうということだ。
「昔は無名な韓国企業の子会社だったのが、LINEが有名になったことで、社員たちは合コンでもモテモテです。上場によってその勢いに、ますます弾みが付きそうです」(LINE関係者)
渋谷から世界へ――。まるで「ここが日本のIT産業の中心地だ」と言わんばかりに、LINE幹部らが昼夜を問わずにここで緻密な戦略を描いている姿が浮かんでくる。
だがLINEの経営実態を取材していたオンライン経済メディア「NewsPicks」取材班は、このヒカリエにある本社機能について、ある一つの疑問を抱いていた。
それは「本当にここが本社なのか」という根本的な命題だった。
会社としてLINEの本社が、ここ渋谷に登記されているのは、疑いようのない事実だ。だが、世界へと破竹の勢いで伸びるLINEの取材を通して、われわれは、積極的に語られてこなかった「もう一つの本社」にこそ、強く興味を惹かれていたのだ。