LINEを名乗る韓国の「司令塔」
そこには「LINE」の4文字がしっかり刻まれていた。
NewsPicks取材班は今年4月下旬、そのもう一つの本社がどんなところにあるのか、この目で確認するために韓国に飛んだ。
韓国は首都のソウル市から南方にクルマで飛ばすこと約1時間、会社の所在地である住所をたどってゆくと、書峴駅のすぐ近くにある小きれいなビルに行き当たった。LINEの親会社である韓国ネイバーも、約3キロと目と鼻の先の距離だ。
このビルに入居しているのが、LINEの100%子会社である「LINEプラス」だ。資本関係だけみると、ただの韓国にある子会社の一つであり、とてもここが重要な拠点であるようには思えない。LINEプラスの社員と思しき人々が、次々とビルの中に吸い込まれてゆくだけで、外からはその内情はうかがい知れない。
ところが、この戦略子会社がいかに重要なものであるかは、取材をすると徐々に明らかになってゆく。
まず、この会社を率いている人物こそ、LINEの生みの親といわれているシン・ジュンホ氏(LINE最高グローバル責任者)だ。一見するとヒョロリとした学者のように見えるシン氏だが、2008年、韓国ネイバーが日本再進出の切り込み役として送り込み、メッセージアプリのLINEを生み出した人物だ。
表向きは日本人が開発した「和製アプリ」になっているLINEだが、同社社員であれば、このシン氏こそ事実上の開発トップであることは誰でも知っている。 そんなシンが韓国側で率いている戦略子会社こそ、このLINEプラスなのだ。
さらに、このLINEプラスの傘下には台湾やタイ、米国などの子会社を束ねており、すでにLINE本社の規模にも匹敵する700人ほどの社員を抱えているのだ(企業調査サービスSPEEDA調べ、2014年12月時点)。
本社のサイズに迫るほど、韓国側にあるLINEプラスの規模がこれだけ大きくなっているのは、なぜなのだろうか。
LINE経営幹部によれば、それは成長スピードの早さだという。2013年、全世界のダウンロード数で3億件を突破したLINEは、あまりにも成長スピードが早かったが故に、日本側のLINE本社はサービスの開発運営で手一杯だったという。
「LINEが倍々ゲームで成長してゆくにしたがって、グローバルでの対応が追いつかなかった。そこで韓国に拠点を作って、親会社のネイバーから人材を受け入れながら、日本と韓国のハイブリッドな強さを出していった」とLINE幹部は強調する。