つまり、急成長するLINEの海外展開を担うためリソース増強のため、この不思議な会社は生まれたという説明だ。
しかし取材をしてゆくと、このLINEプラスという会社はグローバル戦略のみならず、LINEをめぐる様々な意思決定に深くかかわっていることが明らかになってゆく。LINEのある幹部社員は、こう打ち明ける。
「親会社の韓国ネイバーからすれば、日本にあるLINEはあくまで子会社の一つです。日本では、タイやインドネシア、中東などのグローバルなビジネスは担当していません。日本にある本社は、利益の出ている日本のユーザーを担当していますが、実質的な本社機能とか、世界戦略への関与はとても薄いのです」
ちなみに、LINEプラスという会社名にも、この会社の本質が現れている。
「当初はLINEコリアという会社名も検討されました。しかし、韓国側のプライドを考慮して、LINEプラスという社名に決まりました。この名前であれば、子会社でありながらも、韓国側が“上”であるかのように解釈することもできたからです」(LINE元幹部社員)
韓国側こそ、LINEのグローバルな経営全体を取り仕切っている“もう一つの本社”である。それを象徴するようなネーミングになったという訳だ。
タイで開かれた不可思議な記者会見
今年5月3日、LINEはタイのバンコクで記者懇談会を開いていた。タイと言えば、LINEが高い市場シェアを占めている4大市場(日本、台湾、タイ、インドネシア)の一角にある。
この日の発表では、緑色のユニホームをまとったバイクの運転手が品物を配送するタイ市場での独自サービス「LINEマン」をはじめ、音楽事業や決済事業などを含めたタイ事業に加え、世界230か国で展開するLINEのグローバル戦略が詳しく説明された。
ところが、である。そんな重要な記者懇談会は、何故か韓国メディア限定で行われていた。NewsPicks取材班は日本メディアとしての参加を申し入れても、準備ができていないの一点張りで、けんもほろろに断られてしまった。
そしてこの会場に、すでに紹介した“LINEの父”であり、LINEプラスの最高経営責任者であるシン・ジュンホが姿を表していたのだ。
「米国などの大きな市場で、規模の経済で生き残ることはできないだろう。(略)各市場に合う『文化化』戦略を通じてサービスを準備すれば、西欧市場でも必ずチャンスがあるはず」