全国的にみても、販売量が少ないほど営業利益が赤字となりやすい傾向にあることから、SS過疎地では燃料油販売だけでは販売業者は生計を立てられない状況に陥っている。これを放置すると今後さらにSS過疎地が増大し、多くの地域で石油製品の安定供給に支障が生じる恐れがあり、ひいては地域の衰退につながることが懸念される。
首都圏だからこそ過疎が発生しやすい地域も
では、実際にSS過疎地の石油難民の実態はどうなっているのか。SS過疎地は、市町村内のSS数が3カ所以下の自治体として定義されており、12年度末から公表されている。その数は、12年度末257、13年度末は265、14年度末283市町村と着実に増加している。
一方、同一市町村内にSSが少ない場合であっても、隣接自治体で営業するSSが相当数に上り、そこで給油を行うことなどにより、実際の生活上で燃料供給に関する支障が生じていない地域も存在する。そこで、「最寄りSSまでの道路距離が15km以上離れている住民が所在する市町村」も調査されており、その数は257カ所となっている。
では、どのような市町村がSS過疎地になっているのか。15年度末時点でSSがゼロの市町村は全国に11町村ある。このなかには、大阪府豊能郡豊能町が含まれている。1カ所なのは71町村で、都市部でも埼玉県1カ所、東京都3カ所、神奈川県5カ所が含まれている。ちなみに、SSが2カ所なのは100町村、3カ所なのは106市町村に上る。
さて、「最寄りのSSまで15km以上離れている市町村」257カ所と「市町村内のSS数が3カ所以下の市町村」288カ所で重複している、SS過疎地中の過疎地は49町村となっており、埼玉県の秩父郡小鹿野町や東京都の西多摩郡檜原村、西多摩郡奥多摩町なども含まれている。このことから首都圏だからといって過疎が発生していないわけではなく、むしろ首都圏だからこそ過疎が発生しやすい地域があることがわかる。
同マニュアルでは、こうした近隣にSSがない地域では自家用車や農業機械への給油や、移動手段を持たない高齢者への冬場の灯油配送などに支障を来すといった石油難民が大きな問題となっており、過疎地の販売業者を維持し石油の安定供給を行っていくためには、地域のニーズにこたえる総合生活サービス拠点として、SSがビジネスの多角化に取り組むことが不可欠と指摘している。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)