「いじめ・嫌がらせ」が増加
15年度の民事上の個別労働紛争相談の内訳としては以下のとおり。
・いじめ・嫌がらせ:22.4%(6万6566件)
・解雇:12.7%(3万7787件)
・自己都合退職:12.7%(3万7648件)
【助言・指導申出】
・いじめ・嫌がらせ:21.0%(2049件)
・解雇:12.1%(1180件)
・自己都合退職:9.9%(962件)
【あっせん】
・いじめ・嫌がらせ:27.2%(1451件)
・解雇:24.7%(1318件)
・雇止め:9.2%(493件)
いずれももっとも多いのが「いじめ・嫌がらせ」で、それに次いで「解雇」という構図だ。そして、この構図は労働者の就労形態が正社員、パート・アルバイト、期間契約社員、派遣労働者のいずれであっても同じ傾向を示している。
この構図にこそ、雇用実態の病巣が見て取れるのだ。
従業員を自己都合退職に追い込む
実は10年間の相談内容の傾向を見ると、民事上の個別労働紛争相談では06年度から11年度までは「解雇」がトップで、10年度までは相談内容の20%以上を占めていた。しかし、12年度からは「いじめ・嫌がらせ」がトップとなり、14年度からは20%以上を占めるようになった。これも、助言・指導申出、あっせんでも同様の傾向となっている。
そして、急激に相談件数が増加したのが「自己都合退職」。06年度は6.8%だったが、その後、急激に増加して13年度には11%に、15年度には12.7%と06年度の約2倍になっている。これは一体どういうことなのか。
11年度頃までは企業経営者は従業員に対して解雇を強制していた。いわゆる不当解雇だ。しかし、アベノミクスが始まったことで景気回復期待が高まり、雇用が徐々に「売り手市場」に傾いた。それに加えて大きかったのがブラック企業報道だろう。不当解雇や不当労働を強いる企業の実態が暴かれ、ブラック企業というレッテルが貼られるようになった。もちろん、法律等の対応や従業員の意識も高まったことで、不当解雇が難しくなったのだ。
そして、不当解雇の代替手段として「いじめ・嫌がらせ」が蔓延し始める。同時期に「自己都合退職」の相談が急増していることで、いじめ・嫌がらせによって従業員を自己都合退職に追い込んでいる姿が浮き彫りになっている。