7月10日に投開票が行われた第24回参院選は自民党が圧勝し、安倍晋三首相は大型景気対策を打ち出す方針だ。確かに、景気回復が賃金の上昇に結びつけば、労働意欲も湧くかもしれないが、一方では相変わらず人権すら侵害された労働環境にある労働者も多い。「一億総活躍社会」という美辞麗句を実現するためにも、「働きやすい環境」づくりは急務だ。このほど、厚生労働省労働基準局がまとめた「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を見ると、企業がいかに従業員の人格を軽視しているかは明らかだ。
個別労働紛争解決制度には、以下の3つの方法がある。
・総合労働相談:都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など381カ所(16年4月1日現在)にあらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合コーナーを設置、専門の相談員が対応する。
・助言・指導:民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する。
・あっせん:紛争当事者の間に、弁護士や大学教授など労働問題の専門家である紛争調整委員が入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る。
2015年度の総合労働相談件数は103万4936件だった。ピークだった09年度の114万1006件からは減少しているが、8年連続で100万件を超え、高止まりの状態となっている。このうち民事上の個別労働紛争相談件数は24万5125件、労働基準法等の違反の疑いがあるものが19万8037件、法制度の問い合わせが63万922件となっている。一方、助言・指導申出件数は8925件、あっせん申請件数は4775件だった。
特徴的なのは、総合労働相談、助言・指導、あっせんのいずれにおいても、相談内容のトップは「いじめ・嫌がらせ」となっていることだ。総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が6万6566件と前年の6万2191件から増加、4年連続で最多となった。助言・指導の申出では2049件と、こちらも前年の1955件から増加して3年連続でトップ。あっせんの申請では1451件で前年の1473件からは微減したが、2年連続トップだった。いかに、いじめや嫌がらせが企業内部で横行しているかがうかがわれる。