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“高い・遅い・面倒くさい”で苦境のサブウェイ、コロナ禍は復活のチャンスか

文=A4studio
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サブウェイの店舗(「Wikipedia」より/Kirakirameister)

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大と、それに伴う外出自粛・ロックダウンの影響で、世界経済は危機的状況に陥っている。とりわけ、消費者が外出・来店することを主軸としていた外食産業への痛手は極めて甚大だ。事実、個人経営の店などが軒並み店を閉めざるを得ない事態に追い込まれている。

 こうした動きは大手ファストフードチェーンとて例外とは言えなくなってきている。なかでも、コロナ禍以前から経営不調が懸念されていた、サンドウィッチを提供するファストフードチェーン「サブウェイ」は、まさに火の車と言えるだろう。

 本記事では、そんなサブウェイの置かれている状況を、コロナ禍以前と以後という視点から明らかにするため、『コンビニがなくなる日、どうなる流通最終戦争』(主婦と生活社)などの著書を持ち、外食産業の動向にも詳しい経済評論家の平野和之氏にお話を伺った。

コロナ禍以前から不調続きだった「サブウェイ」の経営実態

 まず、コロナ禍が起きる以前のサブウェイはどのような状態だったのだろうか。

「サブウェイは世界的に見ると、あのマクドナルドよりも店舗数の多い、世界最大の外食チェーンなんです。1991年からサントリーホールディングスの子会社として日本進出を始めましたが、2015年時には当期純損益が4863万円の赤字、16年は5047万円の赤字、17年は1435万円の赤字と3期連続の当期純損失を記録しています。さらに、2018年には、サントリーホールディングスが日本サブウェイ株式会社との提携を解消していますし、約20店舗のサブウェイを展開していた株式会社エージー・コーポレーションが2019年1月に倒産してしまっています。

 こうした不調の原因と考えられるのは、日本の食習慣、文化とは根本的に合わないのではないかということです。複雑なトッピングシステムは、ファストフードチェーン店のコアタイムである昼時に時間がない日本のビジネスパーソンらにとって、サブウェイは“ファストフード”とはいいづらいシステムとなってしまっています。また、値段もロングサイズで約700〜800円と安くない。今はコンビニもサブウェイ的なサンドウィッチを販売していますし、その味は充分美味しく、値段はサブウェイより安いですからね。また、夜が稼げないも大きな懸念点となっていました」(平野氏)

起死回生の案を出し続けていた矢先の“新型コロナウイルス”大流行……

 そんなサブウェイだが、起死回生を狙った案をいくつか実施しており、既存店舗の売り上げも上昇していたというが。

「ひとつは新商品です。2019年から発売の『つぶあん』『あんこ&マスカルポーネ』、さらに『炭火焼カルビ・牛』といった日本独自のメニューは話題を呼びましたね。もうひとつは、昨年の8月と11月に行われた、サンドウィッチを一個買うと2個目が100円になるという、破格のサービスなどです。しかし、実際のところ新商品やサービスが長く定着することはほぼありませんでしたし、既存店の売り上げアップも、赤字のフランチャイズ店を閉めて分母を減らし、景気の良かった店舗に客が流れているだけ、というのが実情でした」(平野氏)

 そして追い討ちをかけるように新型コロナウイルスの流行と外出自粛が始まってしまう。

「前提として、もはや勝ち組負け組ではなく、全員負け組の様相をファストフード業界は呈しています。4月7日からの緊急事態宣言により、各ファストフードチェーン店舗は自粛せざるを得なくなりました。これにより、ほとんどのファストフードチェーンは営業自粛、やっていても軒並み時短営業という対応を取っていますし、当然、消費者側も自宅に引きこもり、仕事もテレワークが中心になっているので、客足は大幅減少です。

 ことサブウェイに関しても、都市部やショッピングモール内に併設された店舗が中心だったこともあり、その影響は甚大です。まさに“どこも閑古鳥”という状況ですね。とはいえサブウェイは、外食産業のなかではテイクアウトが中心だったこともあり、被害はファミレスなどの完全店舗型の経営スタイルよりかは幾分マシかもしれません。焼け石に水的なレベルですが。サブウェイ以外でいうと、KFCなども、ドライブスルー需要やテイクアウト需要が高いようですが、それでも先行きは不透明でしょう」(平野氏)

 コロナ禍の影響は、単純な客足減少以外の弊害も生み出しているという。

「これは、感染拡大を防ぐ“対策そのもの”です。お金がかかるんですよ。店員・店舗の消毒・除菌マニュアルの強化、それに伴う教育コストの増加、店員に発熱が出れば新型コロナの疑いで休みを取らざるを得なくなり結果人員不足、もっと言えば、コロナ疑いが出るだけでの店舗閉鎖など、とにかく、やればやるほど赤字が出るリスクばかりになってしまっているんです。とはいえ人命・ビジネスの両面で、全く対策をしないわけにも、全く営業しないわけにもいかないのです。じっとしていれば倒産してしまうのは当然ですから」(平野氏)

 なるほど、今やファストフードチェーンはやらぬも地獄、やっても地獄という絶望的な苦境に追い込まれているということなのか…。

生き残る鍵

 こうした苦境をなんとか乗り切るには、対策の徹底が肝要だと平野氏は語る。

「幸い、新型コロナウイルスの空気感染は確認されていません。ネットを中心とした分析に定評がある中部大学教授の武田邦彦教授曰く、感染経路の8割は接触感染、2割が飛沫感染だと言います。喜ばしいことに、日本では接触感染を積極的に回避する意識が高まっています。問題は2割の飛沫感染を各外食産業がどうとらえるか、ではないでしょうか。

 たとえば、今では常識となったレジのビニールカーテンの設置、店員のマスク着用をより徹底させる必要がありますね。また、全スタッフの体温を消費者に提示させる、レジのこまめな消毒、キャッシュレス割引などで消費者との接点をなくす、ポテトはつまようじを開封して使えるようにする、ドリンクのストローは挿さない、ガムシロップやミルクの投入サービスはしない。こうした対応をしっかりアナウンスするなど、コロナ対策を徹底し、プラス消費者にきちんと対策を印象づけられたファストフードが集客を伸ばしています。今後はさらに、待合室のオープン化、来店のサーモグラフィー、靴の除菌、加湿器や換気システムの導入など、クリーンエア&非接触店舗が成功していく時代です」(平野氏)

 最後に、平野氏が考えるサブウェイが生き残る道とはなんなのだろうか。

「今後、外食産業の店舗は大きな業態転換が迫られるでしょう。一人一人の席の間隔が今までの倍は確保しなくてはならない。それはつまり、席数を半数にするということですから、同じ単価、同じ数量でも売り上げは半減するでしょう。これをテイクアウトでどう補うか考える必要が出てきます。その分、テイクアウトが主軸のサブウェイは一歩アドバンテージがある。ですから、この差を詰められないように“デリバリーサービス”に力を入れるべきでしょう。サブウェイはオフィスに隣接している店舗も多いので、いかに、オフィスに弁当的ポジションで商品を配達できるかも、大きなカギになるでしょう。味や値段よりも、まず安心、安全をどう訴求できるか? コロナ禍での外食チェーンの競争優位性は、ここにあると言えます」(平野氏)

 苦境に追い討ちをかけるような予期せぬウイルスの危機……。まさに風前の灯火といえるサブウェイだが、人々を呼び戻すにはいち早い、かつ大胆な安全・安心への徹底が急務なのかもしれない。

(文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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