テレビ業界にとって衝撃的な判決が出たといえるのかもしれない――。
東京地裁は26日、NHKを受信できないテレビを自宅設置している場合に受信契約の義務がないことの確認を求めた裁判で、原告の訴えを認める判決を下した。
この原告は、筑波大学の准教授が開発した、NHKの番組が映らないテレビを3000円で購入し、自宅に設置しているというが、NHK側は実験を行った結果としてこのテレビを受信可能な状態に復元できると主張。だが地裁は「増幅器の出費をしなければ受信できないテレビは、NHKを受信できる設備とはいえない」との判断を示した。
「原告が所有しているテレビは、筑波大の准教授が開発したNHKの信号のみを減衰させるフィルターを装着しているということですが、もしそんなテレビが広く販売されれば大ヒットするんじゃないですかね。判決では『受信できない以上、契約義務はない』と明確に書かれていますが、裁判所がNHKの受信できないテレビの使用を認めた以上、普及すればNHKにとっては受信料減収につながりかねない。その意味では、今回の判決は、NHKがもっとも恐れている事態を招きかねないといえるかもしれません。
今では若い人だけではなく60代以上の人でも、テレビで地上波の番組はほとんど観ずにアマプラ(Amazonプライム・ビデオ)やネットフリックスばかり観ている人も多いし、NHKをほとんど観ない人も一定数います。今さら“テレビを持っている人は全員、年間1万円以上かかる受信料を払わなければならない”なんていうのは、時代錯誤も甚だしいですよ」(テレビ局関係者)
人口減少や人々のテレビ視聴習慣の減退により、長期的にはNHK受信料の減収が予想されるなか、今年3月にはNHKの全放送番組をインターネットでも同時に配信できるようにする放送法改正案が閣議決定された。そしてNHK受信料制度等検討委員会が2017年に出した答申は、地上波とネットの常時同時配信について「受信料型を目指すことに一定の合理性があると考えられる」としているが、全国紙記者はいう。
「昨年、最高裁判所は、テレビのワンセグ放送を受信できる携帯電話を持っている人はNHKと受信契約を結ぶ義務があるとする判断を出しました。今の20~40代では自宅にテレビがない人も増えているなか、今後、NHKがネット配信を強化することでテレビを持っていない人からも広く受信料を徴収しようと考えているという見方も強い。
今回の東京地裁の判決がきっかけとなってNHKが映らないテレビが普及すれば、NHKがスマホやPC所有者からの徴収の実現に本腰になる可能性もあります。ただ、今でも年1万円以上も受信料を取られることに対する国民の抵抗感も強く、今回の判決を“画期的”だと歓迎する声もあり、スマホやPCを持っているだけで受信料を徴収するというのは、世論からの相当な反発も予想されるため、ハードルは高いでしょう」
いずれにしても受信料をめぐる議論は、NHKにとっては悩ましい問題といえるだろう。