7月29日にオバマ米大統領が「米国遺伝子組み換え食品表示法」に署名をし、米国史上初めて遺伝子組み換え食品表示が法律で義務化されることになったことは、8月12日付当サイト記事『遺伝子組み換え食品、ラベル表示上「判別不能」になる法案成立…食品業界の完勝』で詳述した。
問題は、同法で導入された組み換えに関するQR表示やバーコード表示が、日本に導入されるかどうかである。同表示でも良いことになれば、日本の食品メーカーは一斉に同表示に走ることは目に見えている。消費者はスマートフォン(スマホ)などで逐一、同表示を確かめなければならず、そのような機器を持っていない消費者は、当該商品の原材料に組み換え食品が含まれているかどうかを確かめることができず、消費者の権利保護の観点から大きな問題といえる。
当然、消費者団体を中心に同表示の導入については強い反対の声が出ることが想定される。しかし、果たしてそれで安心できるのであろうか。
消えた製造年月日表示
日本の食品表示制度は、たびたび米国を中心とする外圧で変遷を遂げてきた。その最たるものが、製造年月日表示の廃止と消費期限または賞味期限表示の導入であった。製造年月日表示は戦後直後から導入され、消費者は製造年月日を見て食品を選択してきた。
これに対して圧力をかけてきたのが、米国政府であった。米国政府は日米構造協議の場で、製造年月日表示では米国から輸出される食品が輸送期間が長いため、日本の店頭に並べられた時に製造年月日が日本の食品より古いことが明確になり、売れ行きに影響が出るとして、賞味期限表示に変更することを要求したのである。そして1995年4月、日本政府は国民の間で定着していた製造年月日表示を廃止して、消費期限または賞味期限表示に変更することを決めたのである。
組み換え表示のQR表示、バーコード表示導入にもこのような事態が生じないのか、そこで懸念されるのが、TPPである。
TPP協定第2章「内国民待遇及び物品の市場アクセス」には、27条「現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易」の規定が明記されている。同規定は、組み換え食品の貿易に関するルールを、これまでの貿易協定で初めて明記したものである。WTO(世界貿易機関)協定やFTA(自由貿易協定)でも導入されていない。