昔から「ランチは儲からない」とよくいわれますが、私の1冊目の著書のタイトルにも使われている言葉です。今回は、この言葉の意味を分析してみます。
まずは、参考値として飲食店のベーシックな費用配分は以下となります。
・材料費率:30%
・人件費率:30%
・家賃管理費率:10%
・光熱消耗雑費率:10%
・償却・借入返済比率:10%
・利益:10%
この割合でランチを運営できれば、「ランチは儲からない」といわれないはずです。儲からない理由はどこにあるのでしょうか。
その答えは、人件費にあります。材料費というお店もありますが、例外と思われます。みなさんがいろいろなお店でランチを食べるとき、「値段相応」と感じることが多いと思います。売値1000円のランチなら、300円目安の材料費でメニューを組み立てれば材料費率は30%となります。800円のランチなら240円目安の材料費、1500円なら450円目安と、材料費は変動費として調節が可能です。
その結果、お客さんの日々の懐具合を考慮し1000円上限くらいでランチを提供する場合、使える材料がある程度限られますので、どこも似たようなランチになってしまいます。ほかにもランチメニューのセレクトは、「早く提供する」「一度に入るオーダーに対応する」「多くの分量を仕込む」というオペレーション上の問題も絡みますので、ますます似てきます。
では、人件費はどうでしょう。街場の普通の飲食店、たとえばセルフサービスや各席タッチパネルオーダーなどを導入していないお店の場合、人件費はある一定ラインから変動費のような性質を持ちます。しかし、お客さんの来店に備え、売上があるなしに限らず、客単価にも関係なく一定の人数は配置しなくてはならないという点では、固定費としての面を持っています。具体的な想定で考えてみましょう。
ランチは夜の2倍、効率が悪い?
夜の客単価4000円のお店で、30席あったとします。25人くらいのお客さんで満席となり、1回転で10万円の売上です。実際の売上やお客さんの入り方にもよりますが、3~4人のスタッフ体制でこのお店は運営されることが想定されます。
これがランチの場合、客単価1000円のお店として25人くらいのお客さんで満席、1回転2万5000円の売上です。ランチタイムということで2回転したとしても5万円の売上です。
そこで、夜の売上の半分だからといって、スタッフの人数を半分にできるでしょうか。