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「戸籍改革は、まず中国の都市化建設に利する。中国の都市化は現在30%あまりだが、人口比に合わせて計算すれば、都市化率は60%はほしいところだ。都市化建設の最大の障害である二元戸籍が統一戸籍になれば、農村の都市化推進は非常にスムーズにいく。さらに農村経済の発展、農業の現代化にもプラスになる。現在、土地の租借金価格は非常に高く、農業の大規模経営の実現は困難だ。中国の現代化の推進には、二元戸籍をなくして、農業人口を減らし、農村の土地を集中して大規模農業経営を行い、農民にも都市民と同じだけの福利待遇を与えるようにしないといけない。農村での消費と内需が拡大すれば、中国経済の持続的発展に大きな意義がある」
農民、地方政府、中央政府、それぞれのメリットとデメリットのバランスを満たす条件を整えていけば、確かに戸籍制度改革は実現する可能性もある。同改革は昨年に発表された13次五カ年計画にも盛り込まれた。鎮や小都市から戸籍に関する制限を取り払い、順番に中級都市まで戸籍制限をなくした後、大都市における戸籍改革を行っていけば、一番懸念されている大都市の人口爆発を厳密にうまくコントロールしていけるというのが、中央政府の見通しだ。最終的なカギは、新たな都市戸籍取得者に対する公平な社会保障制度を支える財政問題ということになる。
だが、もし仮に財政問題をクリアできて戸籍制度改革が順調に進めば、その先にあるのは土地改革の問題であり、公有制経済の問題ではないだろうか。農民を土地に縛り付けていて初めて、農地の集団所有(土地公有制)は維持できる。農民が自由に移動できるようになれば、土地(使用権)の譲渡は今以上に頻繁かつ複雑になり、土地公有制は事実上崩れる可能性もある。
そして、土地公有制は、中国の特色ある社会主義経済の基礎を支える制度であり、ここを変えると、すでに建前だとしても社会主義経済の原則も完全に崩れてくる。中国は社会主義の看板を下ろさざるを得なくなり、それはおそらく中国政治の本質を変えずにはおられないだろう。つまり、戸籍改革は、中国政治体制の改革、あるいは崩壊につながりかねないテーマなのだ。だが、それをしなければ、中国経済の再生も難しい。それゆえ、本当に掛け声通りに戸籍改革を進めていけるのかが注目される。
(文=福島香織/ジャーナリスト)
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