2017年4月、森ビルが満を持して東京・銀座に進出する。「GINZA SIX」と命名された同プロジェクトは、松坂屋の跡地に銀座最大の商業施設を建設するもので、複合施設全体で年商600億円を見込んでいる。
六本木ヒルズなどを手がけてきた森ビルは、日本でもトップクラスの都市開発事業者として知られる。しかし、老舗が集まる銀座には手が届いていなかった。時代の流れとともに銀座を重んじる風潮は弱まっているとはいえ、やはり銀座進出は企業にとって一流の証。森ビルが銀座へと進出することは、同社が企業として一流であることを内外に示すという意味が込められている。
今般、人口減少や日本の経済低迷、オフィスビルの供給過剰といった複合的な要因から、都市開発事業者は軒並み苦戦を強いられている。日本全体の不動産価値は下落する一方だが、そうしたなかでも東京都心部だけは事情が異なる。
20年に開催される東京オリンピックによって再開発バブルのような狂乱状態になっているという事情を抜きにしても、東京都の千代田区・港区・中央区のいわば都心3区では都市開発の熱が冷めない。だが、明らかに都市開発のパイは縮小している。不動産開発事業者は、小さなパイを奪い合うように鎬を削っている。
一躍、“ヒルズ”で全国に名を轟かせた森ビルは、「格式の点においては老舗の都市開発業者に後れを取っていた。銀座への進出は、まさに森ビルにとっても悲願といっていい」(不動産業界紙記者)。
道路付け替えという異例の荒業
しかし、GINZA SIXは森ビルが銀座に足を踏み入れたというだけの話では終わらない。同プロジェクトは銀座6丁目の10番・11番の2街区を統合し、一体的に再整備する計画が発表されている。
一見すると単なる再開発事業のように見えるプロジェクトだが、同プロジェクトはこれまで東京で着工されてきた再開発事業とは大きく異なる点があると、関係者たちは口を揃える。
同地を見ると、10番・11番の間には区道がある。区画が細切れになる道路は、大規模な都市開発の障壁だった。だからといって道路をなくすことは難しい。ところが、街区の間にある区道を区画の端に寄せて付け替えるという荒業を、森ビルはやってのけてしまったのだ。
こうした道路の付け替えに対して、道路関係の財団法人研究者はこう話す。