出光と昭和シェル合併、公取委承認でも創業家は「合併はあくまで反対」「脱法あれば告発」
公正取引委員会は19日、出光興産と昭和シェル石油の合併を正式に承認し、同日、出光は英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル株を31.3%取得。昭和シェルの筆頭株主となった。
合併には出光株の33.92%を握る同社創業者一族が反対していることから、昭和シェル株を取得しても合併を推進することは難しい。
出光は2014年にTOB(株式公開買付け)による昭和シェル株取得を進めてきたが、そのときは昭和シェルの特約店、製油所、労働組合から強い反対があり、話は暗礁に乗りあげた。その後、当時昭和シェル社長だった香藤繁常氏が退任し、特約店に信頼の厚い亀岡剛氏が社長に就任していた。
昭和シェルとしては、株だけ取られるのは2年前の悪夢の再来になりかねない。今年10月13日、出光と昭和シェルは共同会見を開き、合併の無期延期を発表した。このとき出光の月岡隆社長は「経営統合が最適というのは変わらないが、同意を得られない創業家との協議に十分な時間を確保するべきだと判断した。期限を設けていないのは、創業家に対するメッセージ。十分な議論を通じ、心底理解してもらうことが重要だ」と説明。11月に入ると、11月末までに予定されていた株式取得時期を12月から17年1月に延期することを明らかにした。
ところが、12月7日付日本経済新聞朝刊の1面トップに『出光・昭シェルが相互出資 2割前後、合併へ先行』という記事が掲載された。
記事によると、合併を目指して出光と昭和シェルが6日、先行して資本・業務提携する調整に入ったという。製油所や石油製品の物流などの一体運営を行い、年間300億円の収益改善効果を見込むという。しかも株式を2割程度持ち合うという。出光は昭和シェル株式33.24%のうち25%未満を取得、残り8%を信託銀行に信託し、一方で昭和シェル側も出光の2割程度の株式を取得する。同記事では「取得方法など詳細は今後検討する」と書かれていたが、仮に第三者割当増資というやり方をとれば、創業家の保有株式を希薄化させ、株主総会で特別決議を阻止する権利を奪ってしまうことになる。
つまり出光株の第三者割当増資を強硬に推進することは、創業家と敵対することを意味する。出光、昭和シェルはともに「両社が発表したものではない」とかたくなに口を噤むが、はたして創業者一族はどう見ているのか。代理人の浜田卓二郎弁護士に話を聞いた。ちなみに本インタビューは、公取委の合併承認直前の12月12日に行われた。