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政府、正社員と非正規社員の差撤廃へ…同じ仕事なら給与やボーナス、福利厚生を同じに

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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EUの事例

 お手本となるEUでは、実際にどうなっているのだろうか。

 EUでは労働条件などを統一するためにEU本部が「労働指令」を出し、加盟国が法制化する仕組みになっている。

 まず1997年にパート社員との合理的理由のない差別を禁止したパートタイム労働指令が出され、99年に有期労働契約指令、2008年に派遣労働指令が出された。派遣労働指令が出されるのが10年遅れた理由は、使用者が派遣元と派遣先の2つに別れているので議論が長引いたことによるが、結果として同じルールを適用することになった。

 派遣労働指令では「派遣労働者の基本的な労働・雇用条件は、派遣先に派遣されている期間中は、少なくとも同じ職務に従事するために派遣先から直接雇用されるとした場合に適用される条件としなければならない」と規定している。つまり、派遣社員の仕事が派遣先の正社員の仕事と同じであれば、給与やボーナスだけではなく福利厚生も含めて同じにしなさいというものだ。

 フランスではこれに基づいて派遣先社員と同じ交通手段や食堂などの施設を利用することができるという規定もある。ドイツでは子どもの養育施設の利用も正社員と同じにしなければならない。

福利厚生施設やボーナス

 日本でいえば、高給で知られる総合商社や大手広告代理店に派遣されている社員が派遣先の事務職社員と同じ仕事をしていれば、給与・ボーナスだけではなく交通費の支給はもちろん、各種の研修講座の受講、保養施設などの福利厚生施設も利用できるということだ。

 たとえば社内食堂の利用では、正社員に一定額の食券を付与していれば、派遣社員にも同じの額の食券を付与しなければならないという裁判例もヨーロッパにはある。

 だが、高給をもらっている派遣先企業の社員と同じ給与を派遣元が支払うのは、難しい場合もある。派遣社員の給与は派遣先から派遣元が受け取る派遣料金から支払われている。だが、ヨーロッパでは派遣元が派遣先の社員と同じ給与を支払えない場合は、派遣先が支払うことを命じる判決も出ている。

 給与だけではなくボーナスの支給も同じだ。フランスの裁判例では、「派遣労働者は派遣先における勤続要件を満たす限り、派遣先の労働者に対して支払われる13カ月分の賞与(年末手当)の支払いを受ける権利を有する」という判決もある。

 たとえば総合商社の事務職の社員に10カ月のボーナスを支払っていたら、派遣社員にも同じ金額を支払わなければならないということだ。

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