資金が雲散霧消の懸念も
休眠預金は金融機関から預金保険機構の専用勘定に集められることになる。これは、あくまでも国家予算とは別会計で運用していくための手段だ。問題は、休眠預金を適切に有意義に活用することができるのかという点にある。
休眠預金は前述の3分野に活用されることが決まっている。さらに、「個人への給付ではなく、団体の活動」に対して、「助成あるいは融資」をすることになっている。
しかし、どのような団体を対象とするのか、どのような事業を対象とするのか、助成と融資をどのような基準で線引きをするのかなど、具体的な詰めの作業はこれから始められる。
休眠預金活用法の施行は18年1月1日となっており、実際に休眠預金の活用による助成・融資が開始されるのは、19年秋頃の見通しとなっている。政府では、春頃から内閣府に休眠預金の活用に関する審議会を設置し、具体的な詰めの作業を行い、19年春頃には対象となる団体の指定を行いたい意向だ。
問題は、たとえば東日本大震災の復興支援事業に対して、多数の不適格なNPO法人が助成を受け、ほとんど事業を行わないまま消えたように、詐欺まがいの団体をどのように見分けるのかという点だ。さらには、助成や融資を受けた団体が休眠預金資金をどのように活用しているのか、会計処理は適切に行われているのかを継続的に監視する体制の構築、また、助成・融資を受けた団体の事業が破たんし損失が発生した場合に、どのように処理をするのか、などといった多くの問題が残されている。
休眠預金を国へ差し出すかたちになるメガバンク役員は、次のように懸念を示す。
「今の段階では、休眠預金の活用方法については穴だらけ。有意義に活用される確率よりも、詐欺まがいの事業でせっかくの資金が雲散霧消する確率のほうが高そうだ」
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)