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木村隆志「現代放送のミカタ」

日テレ、ジブリ映画3連発の異様なTBS包囲網…他局潰し合い&減る視聴者奪い合いの無益なバトル

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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日テレ、ジブリ映画3連発の異様なTBS包囲網…他局潰し合い&減る視聴者奪い合いの無益なバトルの画像1日本テレビタワー(「Wikipedia」より/FlickreviewR 2)

『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系、21時~)で、1月13日に『風の谷のナウシカ』(東映)、20日に『千と千尋の神隠し』(東宝)、27日に『耳をすませば』(同)が放送された。いずれも“ジブリ映画”であり、3週連続で放送され、それぞれ平均視聴率12.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、18.5%、14.5%を記録。人気の健在ぶりを示した。

 賢明な視聴者なら、それが何を意味するかはわかっているのではないか。「またTBSドラマのスタート日に合わせてきたな」と……。3週連続のジブリ映画は、40年を超えるTBSの看板枠『金曜ドラマ』(22時~)への対抗策にほかならない。

「録画されにくい」ジブリ映画の強みをフル活用

 そもそも、連続ドラマは「最初の数話を見逃されると継続視聴されず、残り約2カ月間を棒に振ってしまう」というリスクを抱えている。つまり、ライバル局から視聴者を遠ざける上で、格好のターゲットとなるもの。それを狙ってのジブリ連発なのだが、「高視聴率を獲っているのだから、何が悪い」という声があるのも事実だ。

 しかし、今回の『ナウシカ』は17回目、『千と千尋』は8回目、『耳を』は10回目の放送。つまり、『ナウシカ』は“再々々々々々々々々々々々々々々々放送”ということになる。

 しかも、今回の「冬もジブリ」というキャッチフレーズそのものが、「1年中リピート放送するよ」という何よりの意思表示。「何回でも見たい」という人がいる一方で、視聴者が「録画をしてでも見たい」という新作映画の放送機会を奪っているという重い事実がある。

 私もジブリ映画は好んで見るほうだが、「新作映画は『金曜ロードSHOW!』ではなく、『Hulu』などの有料配信で」という流れを加速するこの方針には、首をかしげたくなってしまう。

『金曜ロードSHOW!』はジブリ以外でも、昨年4月に2週連続「コナン祭り」、10月に3週連続「ルパン祭り」を放送。そのほかにも、TBSの『金曜ドラマ』がスタートする1月、4月、7月、10月に人気シリーズをリピート放送してきた歴史がある。

 ちなみに、新作映画ではなく、人気シリーズ映画をリピートするのは、「単に人気がある」からではなく、「録画されにくい」から。テレビ局にとって、「広告収入の指標となるリアルタイム視聴率を上げるためには、録画されやすい新作よりもリピートのほうがいい」のだ。

 皮肉なことに、TBSの『金曜ドラマ』がいいものをつくるほど録画され、リアルタイム視聴されるのは『金曜ロードSHOW!』のリピート映画ということになっている。視聴者は諸手を挙げて、「ジブリ映画バンザイ」と喜んでいていいのだろうか。

 また、フジテレビの『金曜プレミアム』(16年まで21時~、17年からは19時57分~)も、通常の2時間ドラマではなく、昨年1月に『大奥』、4月に『松本清張スペシャル』の大作をそれぞれ2週連続で放送。

 さらに、昨年4月に『シュガー・ラッシュ』(ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ)、7月に『ファインディング・ニモ』(ウォルト・ディズニー・カンパニー)、『ONE PIECE FILM Z』(東映)などの人気映画、昨年と今年の1月にバラエティ特番『TEPPEN』を放送するなど、『金曜ドラマ』はもちろん、それに対抗する『金曜ロードSHOW!』への対策が見られる。

キムタクにさんまをぶつけて勝利した日テレ

 TBSの連ドラスタートに合わせた対策は、『金曜ドラマ』に対するものだけではない。60年超の歴史を持つ『日曜劇場』(21時~)にも、各局が策を講じている。

 現在放送中の木村拓哉主演作『A LIFE~愛しき人~』にも、日本テレビが初回の1月15日に合わせて、『行列のできる法律相談所3時間SP さんまVS怒れる美男美女軍団!』を放送。特別MCに明石家さんまを迎え、しかも「19時からの先行放送で、チャンネルを変えさせない」という強烈な策を講じた結果、『A LIFE』の視聴率14.2%を上回る17.6%を叩き出した。

 テレビ朝日は『日曜洋画劇場』で15日に『臨場 劇場版』(東映)、22日に『STAND BY MEドラえもん』(東宝)を放送するなど、『金曜ロードSHOW!』同様に名作映画のリピートで勝負。ただ、視聴率はそれぞれ9.8%、6.7%にとどまった。「やはり、ジブリ映画は別格」ということだろう。

 一方、フジテレビは、昨年4月から「同じ21時~の連ドラ放送枠をつくる」という正攻法で、TBSの『日曜劇場』に挑んでいる。今期の『大貧乏』は、TBSの『A LIFE』に1週先んじるかたちで1月8日にスタートさせたが、第1話視聴率は7.7%で、両作がそろった第2話は4.4%に下がってしまった。

 このように、連ドラのスタートに合わせて人気映画のリピートやバラエティ特番を放送するのは、もはやテレビ業界の日常風景。『金曜ロードSHOW!』のジブリ映画リピート放送は1990年代から続いているが、近年TBSの視聴率が上昇していることもあって、より厳しい包囲網が敷かれている。

「冬もジブリ」に話を戻すと、3作目の『耳をすませば』は、「今、もっとも旬の俳優」といわれる高橋一生が14歳のときに声優を務めた映画だった。現在、TBSの『カルテット』(火曜22時~)にメインキャストとして出演して注目を集めている状態を逆利用したシビアな戦略であり、その徹底ぶりに驚かされる。

 案の定、放送前後にインターネットメディアを中心に「あの高橋一生が声優を……」とフィーチャーされ、視聴率は3年半前に放送された前回の13.3%より1.2%も上回ったのだから、日本テレビとしてはしてやったりの心境だろう。

“TBS包囲網”はテレビ業界の無益な争いの象徴?

 ビジネスである以上、民放各局が競い合うのは当然のことだが、テレビ業界全体に目を向けると、「目の前の相手だけを見ておけばいい」という状況ではない。ネットとスマートフォンの普及で、プライベート時間におけるテレビ視聴のシェアは下がる一方。「全体的に下がってしまった視聴率を業界内で奪い合う」という内向きな姿勢では、明るい未来が期待できないのだ。

 テレビ業界の人々にとって、ネットやスマホは幕末における黒船そのもの。もっといえば、「ネットフリックス」「Hulu」「dTV」「Amazonプライム・ビデオ」などの動画配信サービス、「YouTube」や「ニコニコ動画」などのネット動画、あるいは「LINE LIVE」などは、世界の列強にも見えてくる。

 さらに、「Amazon Fire TV」の発売などで、テレビ画面までもネットコンテンツに奪われ始めた危機的状況のなか、「戦うべきは民放他局でない」ことは明らか。まずは、テレビ視聴のシェアを再浮上させなければ、「目減りし続ける視聴者を奪い合う」小さなビジネスになってしまうだけだ。

 民放各局に求められているのは、テレビ業界全体のことを考えた連動。すなわち、他局を蹴落とし合うような討幕運動ではなく、「テレビはおもしろい」「ほかのコンテンツを上回ろう」と団結する尊王攘夷運動ではないか。

 多様性のある高品質なコンテンツをそろえるのはもちろん、重要なのはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やアプリなどを使った積極的なPR。すでに「自局の番宣だけでは見てもらえない」のだから、各局が足並みをそろえてネットを駆使したPR活動をしなければ、多くの情報が飛び交う現代社会で注目を集めるのは難しい。

 しかし、現時点で民放各局の足並みがそろっているのは、無料見逃し配信サービス『TVer』だけ。この『TVer』も、対象番組数が少なく、視聴期間も短いなど出し惜しみ感が漂い、「ないよりはいい」というレベルで訴求力は低い。

「テレビ業界視聴率1位」で満足する状況が続く以上、今後も「TBS包囲網」のような、むなしいバトルが生まれるだろう。テレビ業界の人々は、いつまで無益なつぶし合いを続けるのだろうか……。

 このまま広告収入の形式を変えず、リアルタイム視聴率にこだわり、「録画したいほどおもしろい番組」ではなく「気軽にサクッと見る番組」ばかり放送するようなら、テレビ業界は危うい。「今や、おもしろいものはテレビのなかだけでなく、さまざまなところにあり、視聴者自ら見つけ出せる」という現実を受け入れられるか。テレビ業界全体の潔さと団結力が問われている。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

木村隆志/テレビ・ドラマ解説者/コラムニスト

木村隆志/テレビ・ドラマ解説者/コラムニスト

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

Twitter:@takashi_kimura

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