2016年8月26日に公開された映画『君の名は。』(新海誠監督)は、17年3月27日時点で興行収入247.8億円を突破。この数字は歴代邦画興行収入ランキングで2位という歴史的記録となっている。
一方、そんな『君の名は。』の勢いをいまだ寄せ付けず、興行収入304億円で歴代邦画興行収入ランキング1位を記録しているのが、宮崎駿監督が手掛けたスタジオジブリ作品『千と千尋の神隠し』(2001年)。そして歴代邦画興行収入ランキングトップ10のなかには、以下のようにスタジオジブリ作品は多く存在する。
・3位『ハウルの動く城』(04年/196億円)
・4位『もののけ姫』(1997年/193億円)
・6位『崖の上のポニョ』(08年/155億円)
・7位『風立ちぬ』(13年/120.2億円)
『君の名は。』が爆発的大ヒットを記録している今、邦画アニメーション映画の世界を開拓してきた先駆者であるスタジオジブリの存在感が改めて際立っているともいえる。
そこで今回は、かつてスタジオジブリに所属し、『天空の城ラピュタ』(1986年)、『となりのトトロ』(88年)、『魔女の宅急便』(89年)などの制作で宮崎駿監督の姿を間近で見続けていた『もう一つの「バルス」 ―宮崎駿と「天空の城ラピュタ」の時代―』(講談社)の著書・木原浩勝氏に、スタジオジブリについての話を聞いた。
初期作は劇場で大ヒットしていない
スタジオジブリ作品について、初期作こそ面白かったものの中期以後の作品は面白さの質が低下している、という声をよく耳にする。
しかしながら前述したとおり、スタジオジブリは歴代邦画興行収入ランキングの上位に5つもの作品を並べる大人気のアニメーション制作会社。なぜ「面白くない」という声が聞こえるなかで、興行収入的に大ヒットしている作品が多いのだろうか。
「まず前提として数字(興行収入)と面白さの関連性ということに関しては、本当に相関関係はあるのかと問われれば、『あまり関係はないかもしれない』という考え方を私は持っています。もちろん“面白い”はあくまで人それぞれですが……。
『天空の城ラピュタ』の劇場公開時の興行収入は11.6億円であり、ヒットといえばヒットかもしれませんが、100億円を突破する作品と比べれば大ヒットとはいえないでしょう。また次作である『となりのトトロ』も興行収入は11.7億円で、その数字だけ見ればこちらも大ヒットとはいいにくいです。これがスタジオジブリ第3作である『魔女の宅急便』になると、興行収入が36.5億円となり、100億円という大台には遠く及ばないまでも世間一般におけるヒット作に属する作品となっていると思います。