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北陸銀行、カリスマ頭取退任の背後にくすぶるマネーロンダリング関与疑惑

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北陸銀行、カリスマ頭取退任の背後にくすぶるマネーロンダリング関与疑惑の画像1北陸銀行本店(「Wikipedia」より)
 金融界で有名なカリスマ頭取が退任した。傘下に北陸銀行北海道銀行を持つほくほくフィナンシャルグループ(FG)は、3月22日、北陸銀行頭取を兼務する高木繁雄社長(64)が同行の特別顧問に退き、後任に庵栄伸取締役(同行常務執行役、56)を昇格させる人事を発表した。庵氏は同行の頭取も兼務し、新設されるFG会長には北海道銀行頭取の堰八義博(57)が就く。

 退任する高木氏は、2002年の北陸銀行と北海道銀行の経営統合を主導し、03年に設立したほくほくFGの社長に就いた。公的資金を09年に完済するなど経営再建を果たし、2行の統合を軌道に乗せたと評価とされている。今回の退任も、4月から新中期経営計画がスタートするのに合わせ、「一区切りついた機会に経営を一新し、経営陣の若返りを図りたい」(高木社長)と、既定路線を強調するが、実際は、「あの事件の影響もあり、やむなく退任を決意したのではないか」(某地銀幹部)と囁かれている。

 高木氏の地元・富山県での評判は、あまり芳しいものではない。地元財界関係者は次のように語る。

「北陸銀行には、10年以上も君臨する高木繁雄頭取がいる。県財界の大立者で、
行内では天皇とも呼ばれているほどのカリスマで知られる。モットーは『シュー・スピリット』。毎日どれだけ靴底をすり減らして取引先を開拓したかという意味で、厳しいノルマをかける頭取」として有名だ。「目標を達成できなかった支店長は即刻処分されると恐れられる存在。誰も口出しはできず、気に入らない幹部は、ことごとく外に出された」という。

 また、企画担当が長かったということもあり、金融庁幹部とも昵懇で、「そもそも11年前の02年6月、赤字に転落し、国が割り当てた優先株を無配にした責任を取る形で犬島伸一郎頭取(当時)が辞任し、後任に平取締役であった高木氏が抜擢された背後には、金融庁の後押しがあった」(地銀幹部)との見方もある。

 何もなければ頭取退任後も代表権を持つ実力会長として君臨し続けるとみられた高木氏だったが、致命傷となったのは、北陸銀行をめぐるマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑だった。事の起こりは、昨年7月17日に米上院の国土安全保障・政府問題委員会が、英金融大手のHSBCホールディングスを麻薬マフィアなどのマネーロンダリングに関与したとする報告書を公表したことに始まる。HSBCはこの事実を認め、巨額な賠償金支払いに備えて20億ドルもの引当金を積んだ。

だが、意外だったのは、A4判で330ページにも及ぶこの報告書の中に、日本の北陸銀行の名前が出てきたこと。北陸銀行はロシアの中古車輸入業者が持ち込んだTC(トラベラーズチェック)を大量に引き受け、最終決済をHSBCの米国法人に委託していた。その額は05~08年の4年間で2億9000万ドル(230億円)にも上るというのだ。これが麻薬の資金洗浄に利用されたという疑惑である。

 これに対し、北陸銀行は、「まったくいわれのない話」と否定した。しかし、ある大手地銀幹部は、「本来TCは、旅行者が買い物などで使う少額の決済用の仕組み。それをロシアの中古車輸入業者が、貿易取引として銀行に大量に持ち込んでいたこと自体が不自然。北陸銀行のチェック態勢が甘かった」と指摘する。意図的ではないにしても、北陸銀行がグローバルな麻薬取引の資金洗浄に巻き込まれたことは事実であろう。

「高木頭取のノルマ主義が、ロシアの中古車輸入業者という不透明な顧客のTCを引き受ける背景になった」というのが金融界の見方だ。

 高木氏は、退任会見で、「庵氏には金融庁との関係強化に尽力してもらいたい」と語った。金融庁頼みの姿勢は最後まで変わらないようだ。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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