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日本共産党都議団副団長・曽根はじめ氏インタビュー

約6千億円税金投下の豊洲市場移転、中止で築地残留の可能性も…手抜き工事の「狙い」

構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト
約6千億円税金投下の豊洲市場移転、中止で築地残留の可能性も…手抜き工事の「狙い」の画像1石原元東京都知事、豊洲市場移転問題で説明会見(Natsuki Sakai/アフロ)

 環境基準値を79倍上回るベンゼンや12倍のシアンなどが検出された東京・豊洲新市場。前編では、なぜ東京都が東京ガスから土壌汚染されている工場跡地を買収したのか、そしてどのような対策が取られてきたのか、当初から豊洲への移転に反対してきた日本共産党都議団副団長で東京都議会議員の曽根はじめ氏に話を聞いた。

 今回は、本来行われるべき盛り土がなぜ一部で行われていなかったのか、その理由や背景について、曽根氏に聞いた。

――豊洲市場の工事が終わって、建物の下に盛り土がされていなかったわけですが、理由はなんでしょうか。

曽根 汚染対策などを見ながら、なんとなくおかしいと思っていました。そして実際に工事が終わってみると、やはり盛り土がない。やはり東京都が汚染対策を軽く見ていたのではないかと思います。立派な建物ができてしまえば、その下までは見ないという姿勢があったのではないでしょうか。設計の段階から、手抜きをしていますから。

――こうした状況に、専門家会議は何か意見があったのでしょうか。

曽根 工事を再開したときには、すでに解散していました。今回、小池都知事になって再び招集されたのです。

――盛り土の対応などについて、専門家会議でもきちんとした提言があってもおかしくないと思いますが。

曽根 彼らがどこまで本気で考えていたのかわかりません。「この程度でいい」と思っていたのかもしれません。2008年7月に提出された専門家会議の最終報告書には、ピンポイントの汚染は取り切れない可能性があると指摘されています。深さ2メートルまでの汚染は、ブルトーザーやショベルで掘り起こし、いちいち目視で発見するわけです。専門家も大変だということは、わかっていたと思います。

なぜ盛り土はされなかったのか?

――その後、調査はどのように行われてきたのでしょうか。

曽根 14年の11月から、第1回目のモニタリング調査をやっています。小池百合子知事に替わったのが16年8月初めで、そのあとの8月から9月にかけて8回目の調査をやり、11月末から12月にかけて9回目の調査をやりました。

――業者の選定について、なぜ9回目だけ入札形式になったのですか。

曽根 確かに入札というかたちで業者を選んだのは9回目だけでした。それ以外は施工業者が調査の業者を選んでいました。これは東京都の言い分ですが、8月ぐらいまでは外回りの工事をやっていましたし、建物自体も6月に完成したばかりだった。そのため8回目までは工事中の敷地内での調査なので、工事会社の工事の日程に合わせて調査する必要があった。それでゼネコンにお願いして、工事の日程にあわせて業者を選んでもらっていたということのようです。だから4回目から8回目までは、ゼネコンが受けて下請けに出していたということです。

――それは利益相反行為になりませんか。

曽根 資格を持っている人が決められた手続きの中でやっているのであれば、単純にはそうは言えません。問題なのは、そうした手続きをきちんと経て本当に行われたかどうかです。それは今後問われることになると思います。ただ、何回かは環境局の担当者も立ち会っています。

――盛り土せずに地下を空間にしたのは、すでに工事が進んでいるので、できる限りの応急措置を施したということですか。

曽根 当時、「汚染対策で1000億円を超える対策をやるんだったら、移転そのものが難しいじゃないか」という話がありました。築地を建て替える費用が1000億円ぐらい余計にかかるという噂がありました。それとの比較で、豊洲も汚染対策で1000億円かかるんだったら、築地の建て替えでいいじゃないかという話も一部でささやかれていました。豊洲移転を進めていくためには、汚染対策に1000億円をかけるわけにはいかないという関係者の思いがあったのではないでしょうか。

――それで、盛り土をしないということが起こってしまったわけですか。

曽根 その可能性はあるかもしれません。盛り土をしなければ相当額浮き、逆に行えば、地下のメンテナンスができなくなる懸念もあるゆえ、液状化のリスクなども検討していたと言われています。

豊洲移転中止という選択肢

――東卸(東京魚市場卸協同組合)との関係は、どうだったのでしょうか。

曽根 東卸は当初、豊洲への移転に反対していました。しかし、東京都が環境問題にしっかり取り組むと言ったことから、その後の理事長は移転に賛同しました。しかし、都がその約束を破っているので、もう一度考え直すというのは難しいと思います。

――築地の業者が納得すれば、解決する話なのですか。

曽根 業者だって納得しないと思います。

――築地を部分改築しながら戻していくようなやり方も、あったと思います。

曽根 具体的なことは言えませんが、豊洲に移転するのを、業者の方々が納得するのか。今は地下の汚染が見つかってしまいましたから、これからは本当にどうなるのかわかりません。

――しかし、築地も建物の老朽化は進行していますよね。

曽根 そうですね。ただ、11年の東日本大震災で築地は大きな被害はなく、液状化も起こっていません。そうした実績はあります。震度5以上の地震は何度も経験していますから。しかし建物は老朽化で厳しくなっていますから、補修には力を入れていかなければなりません。

――豊洲は今後、どうすればいいでしょうか。

曽根 地下の空間をはじめ手抜き問題が出てきていますから、何があっても不思議ではないと思います。豊洲移転は中止を含めて抜本的に再検討すべきです。豊洲にかかった5800億円の中には土地取得や建物、汚染対策、地下水監視システムなどいろいろな費用が含まれています。これが全部、都の財政負担になるのは、正直納得いかないですね。石原元都知事らの責任や、東京ガスやゼネコンなどの責任も追及すべきです。
(構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

松崎隆司/経済ジャーナリスト

松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。

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