最近、コインランドリーを目にする機会が増えていないだろうか。業界推計の数字によると、2015年度時点で1万8000店舗が全国にあり、出店店舗数ではコンビニエンスストアの新規出店数を上回るという。急増の背景には、単純に需要増加による供給増加という構造がありそうだ。
まずは需要から見てみよう。
これまでのコインランドリーのユーザーといえば、自宅に洗濯機を保有していない都心に住んでいる単身赴任者や学生といった層だった。しかし、女性の社会進出により、共働きの兼業主婦ができる限り家事の時間を短縮したいので、通勤の帰りにちょっと立ち寄るといったケースが増えている。また、高層マンションなどの集合住宅に住んでいると、部屋干しなどをすると臭いがついたりするため、わざわざコインランドリーに行き大型乾燥機を使うということも増えているらしい。
いわゆる潜在的な利用者層が拡大し、彼らの「使用機会」が変化しているのだ。
次に、コインランドリーを出店する立場から考えてみる。
業界を地域密着型から変容させたのが、コインランドリーのフランチャイズ・ビジネスを手がける大手4社。横浜市に本社を置くマンマチャオに関しては、昨年1年間で100店舗を新たに出店し、合計300店舗になるという。
また、店舗内でもさまざまな工夫がなされている。Wi-Fiを設置したり、カフェ的なサービスを提供したりすることで、店舗内に長期滞在をしてもらう施策や、ポイントカードを発行し継続的に利用してもらう努力をしている店舗も出てきている。
需要増加に伴い、サービスを供給する側もビジネスモデルを確立させつつある点も、このカテゴリーを進化・拡大させている要因だ。
仮説を立て検証する
では、中小企業は大型コインランドリーの増加から、何を学ぶべきだろうか?
まずは、消費者の行動と価値観が変わると、既存の商品やサービスの使い方も変わる、ということを理解することだ。
コインランドリーの業界でいえば、女性の社会進出の増加で、「自分が使える時間を見直し、有効に使いたい」という潜在需要が発生し、そこにサービスを展開した点が拡大につながっている。こういった世の中の大きな流れは、消費者の行動を変える。その変化に対応し、価値を提供することが重要なのだ。
コンビニエンスストアが単に物を売る場所ではなく、公共料金を払ったり、荷物を発送する場所になったのと同じで、コインランドリーも単に洗濯をする場所ではなく、時間を有効に使えるという価値を付加することで、需要の拡大につながったのだ。
政府や経団連が呼びかけている「プレミアムフライデー」などは、私たち事業者側にとっては一大チャンスといえるだろう。
同時に考えるべきは「自分の業界を破壊する黒船」に備えることであろう。大型コインランドリーが増えれば、既存のクリーニング店やクリーニング代行サービスなどは需要を奪われる可能性が高い。このリスクには常に備えておくべきだろう。
具体的には何をすべきだろうか。
大きな市場の流れで需要拡大がある、と踏んだら、消費者目線で潜在需要を探ればよい。潜在需要そのものは視覚化や数値化が難しい。また消費者自体も気づいていないため、リサーチをしても出てこない。観察し、仮説を立て検証するしか発見できる方法はない。
そのために、ターゲット層の属性を規定し、彼らがどこで何をするかを想定し、観察しにいくことで、「こんな価値観があるだろう」という仮説を立てることから始める。そして、少しずつ具体化して実践し、行けると思ったら本格化すればよい。いわゆるテスト・マーケティングだ。
コインランドリー業界の拡大からも、やはり学べることは「顧客の創造」である。
(文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長)