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佐川急便、上場で億万長者社員続出か…運転手一斉検挙や暴力団利益供与も

文=編集部
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佐川急便、上場で億万長者社員続出か…運転手一斉検挙や暴力団利益供与もの画像1佐川急便のトラック(撮影=編集部)

 宅配便大手の佐川急便を傘下にもつ、持ち株会社SGホールディングス(HD)が東京証券取引所に上場するという情報が、株式市場を駆けめぐっている。早ければ年内に上場するという。上場時の時価総額は3000億円を超えるとの見方がある。

 SGHDは昨年3月、日立物流と資本業務提携を結んだ。SGHDは日立グループが59%出資していた日立物流の株式のうち28.9%を875億円で取得。一方の日立物流は、SGHDが保有する佐川急便株の20%を663億円で買い取った。佐川急便と日立物流は3年以内に経営統合を目指す。

 陸運業界国内3位に位置する佐川と、4位の日立物流という大手事業者同士が手を結んだことで、衝撃が走った。2016年3月期の売上高を単純合計すると、1兆6236億円に上る。宅配便のパイオニア、ヤマト運輸を擁するヤマトホールディングスの1兆4164億円を上回り、首位の日本通運の1兆9091億円に迫る。

 両社の資本提携の大きな狙いは3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)とデリバリー(配達・配送)の融合にある。3PLとは、荷主に対して商品の受発注、在庫管理、情報化まで包括的な物流改革を提案し、一括して物流業務を受注すること。3PLで国内トップの日立物流と、宅配便で国内2位の佐川急便が組むことで、川上から川下までカバーする体制を築くことができる。

 物流も主戦場がアジアに移るなか、企業規模の拡大はグローバルプレーヤーにとって必須の条件といえる。そのため、SGHDはアジアでの事業拡大を急いでいる。16年10月には、日立物流と協力し、中国で生産した衣料品を日本の納品先に一貫輸送するサービスを開始した。ベトナムでは同年11月に大型物流施設を完成させ、同国の不動産・小売り大手と物流分野で提携、翌12月には宅配会社を買収した。

 海外事業を強化するなか、SGHDは上場で得た資金によってアジアの企業にM&A(合併・買収)攻勢を仕掛けるとみられている。

筆頭株主は従業員持株会

 佐川急便は1957年、故佐川清氏が京都府で創業。「飛脚宅配便」で知られる宅配便事業を全国に展開して急成長した。06年に純粋持ち株会社SGHDを設立、佐川急便はその100%子会社となった。

 SGHDの17年3月期の連結決算は、売上高に当たる営業収益が前年同期比2%減の9200億円、営業利益は7%減の500億円、純利益は7%減の315億円となる見込みだ。

 主力の宅配便などのデリバリー事業は横ばいだが、不動産の流動化事業が足踏みしたことで減収減益となる。不動産流動化とは、投資対象となる不動産を小口化した商品を、幅広く投資家に売却して収益を上げる手法をいう。

 SGHDは、19年3月期の連結営業収益を16年同期に比べて6%増の1兆円、営業利益は15%増の620億円という目標を掲げている。

 16年3月末現在の資本金は118億8200万円で、筆頭株主は27.03%を保有するSGHD従業員持株会、2位は佐川家の資産管理会社である新生興産の11.83%、3位は公益財団法人佐川美術館の7.56%、4位は創業家一族で会長の栗和田榮一氏の5.00%、5位は三菱東京UFJ銀行の4.67%となっている。

 従業員持株会が断トツの大株主ということは、従業員にとっては「おらが会社」なのだ。上場によって時価総額が3000億円に達すれば、従業員持株会は800億円程度の資産を保有する計算で、億万長者の従業員が大量に誕生することになるだろう。

佐川急便のさまざまな事件史

 かつて佐川急便は、さまざまな事件を起こした。1990年代初めの東京佐川急便事件では、故金丸信・元自民党副総裁や故石井進・元稲川会会長への違法なカネの流れが明るみに出て批判を浴びた。事件の責任を取り、佐川正明氏(清氏の後妻の長男)が社長を退任し、栗和田榮一氏(清氏の先妻の息子)が後任に就いた。

 2000年代初めには、お家騒動が勃発した。佐川清氏と栗和田氏が対立し、旧経営陣は栗和田氏の解任を仕掛けたが返り討ちにあった。旧経営陣によるクーデターは失敗し、創業者の佐川清氏の影響力は一掃され、栗和田氏が佐川急便の経営権を掌握した。その後、今日まで栗和田体制が続いている。

 SGHDが上場するには、ガバナンス(企業統治)がネックになる可能性がある。

 主要子会社の佐川急便では昨年、東京営業所の運転手が駐車違反による検挙を逃れるために、知人らを身代わり出頭させる事件を起こした。身代わり出頭は、城北、渋谷、城西、城南、足立、杉並、世田谷用賀、台東の都内各営業所に広がっていた。 警視庁は3月3日、一連の身代わり出頭事件の検挙者は計106人になったと発表した。

 昨年12月には配達員が荷物を蹴ったり、地面にたたきつけたりしている様子が動画でインターネット上に投稿された。

 ネット通販の利用拡大で宅配便の取扱量は増えたが、これは“利益なき繁忙”だ。ドライバーの不足が深刻化していることが、一連の事件の根底にある。

 株式市場はガバナンスに目を光らせている。SGHDの難点は財務ではなく、不法を容認してきた企業体質にある。上場のハードルは高いとみる証券会社もある。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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