13年の時点では、中国製EVの世界シェアは約6%にすぎなかった。いや、6%という数字は決して小さなものではなく、何年も前から中国ではバスやタクシーにEVが導入され、増加傾向はみられた。だが、近年その速度はあまりにも急速で、15年度のEV販売数は18万8700台を記録し、アメリカの11万6000台を抜いてトップに立つと、もはや独壇場である。今や中国で販売されるEVは70車種にも及ぶ。
もちろん、その背景には、欧米諸国でも当てはまることだが、政府による購入支援がある。欧米では二酸化炭素排出量の削減が、中国ではPM2.5による大気汚染の抑制が目的にある。中国は経済成長に伴い、深刻な大気汚染の問題を抱えてきた。そのため、都市部では、自動車の購入自体にすらさまざまなハードルが設けられてきたが、排ガスを出さないEVに関してはハードルが低く抑えられている。EV購入の際の補助金は、中央政府と地方政府からのものを合わせれば日本円にして100万円を超え、税金にも優遇措置があるのだ。それが中国におけるEVの普及を後押ししている。
具体的にどんな車が売れているのだろうか。昨年12月に最も売れたのは吉利汽車(Geely)の Emgrand EVで、6023台。人気の高いセダンのEV版で、モーターが127馬力、加速性能は0-100km/hが9.9秒、そして、45kWhのリチウム電池での航続距離は253kmに及ぶ。
2位は、同月に発売されたばかりのBAICのEC180で、4128台。セダンタイプが多いなか、ワゴンタイプで人気を博した。1回の充電で180kmの走行が可能である。
3位は、少数派PHVのChery Arrizo 7 PHEVで、2922台。9.3kWhの電池を搭載し、モーターでの航続距離は50kmである。
4位は、2010年以来ロングセラーとなっている比亜迪汽車(BYD)のe6で、2528台。80kWhの電池で航続距離は400kmにも及び、タクシーとしても人気が高い。
このように中国の自動車各メーカーは性能だけでなく、デザイン性も磨いたEVを次々と投入し、熾烈な商戦が繰り広げられている。
政策に翻弄される自動車業界
日本ではHVが人気だが、欧米や中国ではEVやPHVが主流である。その背景には、概して、排ガス量に応じて補助金の額に差が出ることにある。つまり、政府の方針次第で、普及する車は大きく異なってくると言える。