我々があまり知らない中国の自動車市場
トランプ米大統領は、日本は米国車の輸入に対しては障壁を設けている一方、アメリカは低い関税で大量の日本車を受け入れており、不公平であるとの不満を述べてきた。もちろん、その主張は的外れで、日本は米国車を関税ゼロで受け入れているのに対し、逆にアメリカは日本車に対して2.5%の関税を課している実態があることは、これまでの報道からも、今や多くの人々が知っている。
だが、背景を知ることなく、ただ現地で走っている自動車を観察するだけでは、そんな誤解も生じやすいのかもしれない。アメリカの道路を行き交う自動車を見れば、確かに日本車は多く、日本では米国車をあまり目にしない。
例えば、電化製品に関しては、各国の大手メーカーの商品が比較的に万遍なく世界各地に普及しやすいが、自動車に関してはなかなか難しい。自動車は人命を預かるために輸出相手国でたくさんの条件をクリアせねばならないだけでなく、各地で長期的なアフターケアも求められ、参入への投資は莫大なものとなる。そんな事情もあるだろうが、走っている車を見れば、世界市場の縮図になっているといった国は存在しないといえる。
もちろん、日本も独特の市場である。例えば、隣国の中国や韓国の自動車すら目にしない。日本の道路で行き交う自動車ばかり見ていても、世界で流通する自動車のごく一部を見るにすぎないことになる。
そして近年、注目すべきは、中国市場だと思われる。我々は中国で販売されている自動車を見る機会はほとんどないが、実は、中国は世界一の電気自動車(EV)大国である。日本の状況と異なり、ハイブリッド車(HV)よりもプラグインハイブリッド車(PHV)、そして、プラグインハイブリッド車(PHV)よりも圧倒的に普及しているのが純粋な電気自動車EVである。ちなみにHVとPHVとの違いは、後者のほうが大容量のバッテリーを積み、充電によって、距離は限定されるが、モーターのみで走れることにある。単にEVといった場合、PHVをEVに含める傾向がある。
EV大国・中国
2016年度、中国におけるEV販売数は35万1861台で、全世界で販売されたプラグイン車(EV及びPHV)の約46%を占めた。中国メーカー製のEVだけでも、全世界の生産量の43%を占めたのだ。