「売却基準価額1万円」--、不動産競売物件情報サイトには全国の地方裁判所の競売物件情報が掲載されている。そのなかでも目立つのは、新潟県湯沢町のマンションの「売却基準価額」(入札の最低価格)の安さだ。なんと「1万円」物件があるのだ。
しかも、その物件は上越新幹線停車駅の「越後湯沢」から車で10分、ファミリー層に人気のスキー場のすぐ目の前。2DK・44平米の広さで、ジェットバスやサウナ付きの大浴場とフィットネスルームもある。
不動産競売物件情報サイトからダウンロードできる物件情報を見てみると、不動産鑑定士の評価額は130万円。入札の最低価格が1万円と格安なのは、毎月の管理費等の滞納があるからだ。その額は約130万円。競売落札者は前オーナーの滞納分を原則、引き継がなければならない。このため、本来の評価額は130万円前後なのだが、管理費等の滞納130万円を払わなければならないために、入札額が減額されているというわけだ。それでも、相場的にはこの物件は同規模でも190万円で売り出されていることから、このリゾートマンション(リゾマン)はお得感がある。
湯沢町は、全国のリゾマン(約8万室)の2割近くが林立する集中地区(58棟約1万5000室)で、“リゾマン銀座”だ。多くはバブル期に建てられたが、1990年代初頭のバブル崩壊や、2008年のリーマンショックもあって、所有者の高齢化などからリゾマンを手放す動きがあるうえに、若者世代のスキー・スノーボード離れと中間所得層の没落で、購入希望者が減少。供給過剰から価格下落が止まらないのだ。
2月1日付朝日新聞記事『1室1万円も…激安「リゾマン」、高齢者の定住進む』では、増加する競売の裏側を次のように紹介する。
「実は、競売をしかけているのはリゾマンの管理組合だ。そして落札するのも主に管理組合なのだ。ある管理組合の理事長は『管理費の滞納を膨らませる物件所有者と連絡がつかない場合、やむを得ず競売にかけています』と話す。リゾマンの競売物件の多くには滞納分があるため、一般からの入札参加は珍しい。管理組合が自ら落札することも想定して、管理費を滞納された債権者として物件を競売にかけるのだ」