2016年は空港民営化元年であった。それまで日本の空港は、滑走路や駐機場を国が、ターミナルビルをビル会社が、それぞれ所有していた。だが、ビルの運営といった非航空事業は黒字だが、国の管轄である航空事業は赤字なため、海外のように運営主体をひとつにする機運が出てきた。
そこで、空港など公的施設の長期の運営権を民間企業に売却する「コンセッション」と呼ばれる取り組みが始まった。
大型案件の第1号が、関西国際空港と伊丹空港の一体運営だった。総合リース会社のオリックスをはじめ、フランスの空港運営会社ヴァンシ・エアポート、パナソニック、阪急阪神ホールディングス、南海電気鉄道など関西圏企業30社の出資で設立した関西エアポートによって16年4月、運営が開始された。関西エアポートが総額2兆2000億円の巨費を投じ、両空港の44年に及ぶ長期の運営権を獲得した。関西の企業連合以外の入札者はなかった。
大型案件の第2号は、16年7月に民営化された仙台国際空港だ。これには4つの陣営が応募した。「三菱商事、楽天」「三菱地所、大成建設、仙台放送、全日本空輸(ANA)と羽田空港旅客ターミナルビルを運営する日本空港ビルディング」「イオン、熊谷組」「東京急行電鉄を中心とした東急5社、前田建設工業、豊田通商」である。
勝利したのは東急グループで、運営権は22億円で譲渡された。運営期間は30年間で、さらに最長で20年延長することができる。東急コミュニティーは北九州空港ターミナルのビルの管理業務、東急エージェンシーは成田国際空港、新千歳空港、中部国際空港などの空港広告を手掛けている。前田建設は羽田D滑走路の建設や香港国際空港の運営に携わっており、豊田通商はラオスで空港国際ターミナルを運営するなど、それぞれに実績がある。