2011年に入り、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)といったFSC(Full Service Carrier:従来からあるフルサービスを提供する航空会社)が、相次いでLCC(Low Cost Carrier:いわゆる格安航空会社)に参入した。こうした動向に驚かれた人も多かったのではないだろうか。
当時の筆者の率直な感想は「思い切ったな」であった。また、ナイストライとは思いつつも、日本のFSCのLCC参入に関しては正直うまくいかないのではないかと思っていた。なぜなら、とりわけ日本のFSCは保守的かつ高コスト体質であり、LCCに参入してもサービスを徹底して削減することができず、魅力的な低価格を実現できないと考えたからである。しかしながら、例えば、ANAが出資するピーチの2015年度の業績は売上479億円、営業利益61億円、営業利益率は約13%と極めて順調に推移している。
LCCのビジネスモデル
LCCの源流は1967年にアメリカ・テキサス州で設立されたサウスウエスト航空にまでさかのぼることができる。「社員第一、顧客第二」といった経営方針でも有名な同社は、現在まで順調にビジネスを展開している。その他、1985年にアイルランドで設立されたライアン航空は世界を代表する航空会社にまで成長するなど、LCCは欧米を中心に古くからメジャーな存在であった。一方、日本では1996年に設立されたスカイマーク(現在ANA傘下)がLCCの草分け的存在といえる。
航空会社により多少の違いはあるものの、基本的にはどのLCCもサウスウエスト航空により考案されたビジネスモデルを採用している。例えば、同一機材(ボーイング737など)に揃えることにより、パイロットの訓練コストや整備コストを最小化する。空港使用料の安い地方の空港を活用する。エコノミーのみの1クラス制にする。キャビンアテンダントによる機内清掃に加え、預かり手荷物、座席指定、機内食の有料化など、徹底したコスト削減により、低価格を実現している。