パナソニックの食器洗い乾燥機(食洗機)の売上が累計で1000万台に達したそうだ。それはそれでいいことなのだが、この数字、パナソニックの洗濯機や冷蔵庫の売上と比べて小さいと思われないだろうか?
実は日本で食洗機が売れないのは、50年来の家電業界の七不思議だ。高度成長期に掃除機、洗濯機と家事を助ける家電が普及して、当然その次は食洗機という話になるはずだったのだが、日本ではなぜかこの当然が当然にはならなかった。
しかし欧米の状況は日本とは全然違う。食洗機はほとんどの家庭に普及していて、たとえばアメリカの普及率は90%以上。なのに日本では最新の調査でも28%程度しか普及していない。
私は30年前ぐらいから研修の講師として「日本市場で食器洗い乾燥機を売る方法を考えよう」という課題をたびたび行っている。その研修を始めた当初、30年前の普及率はわずか4%だった。この謎を解くのはビジネス思考のいいトレーニングにもなるということで、一緒に考えてみることにしよう。
どう生活が変わる?
そもそも、この記事を読んでいらっしゃる読者のみなさんの4人のうち3人は食洗機のない生活をされているはずだから、食洗機を購入するとどう生活が変わるのかという話から説明しよう。
我が家に食洗機が導入されたのは研修を始めた30年前。きっかけは、結婚当初に家事の分担を決めた際に「食器洗いは夫の担当」と決めたことだった。新婚時代はせっせと皿洗いに励んでいた私も、1年が過ぎた頃からさぼることを考え始めた。そこでボーナスで6万円ぐらいの食洗機を購入したのだ。
購入してみると、とにかく便利だ。食事が終わって食器と洗剤をセットしてボタンを押すと、後は自動で洗ってくれる。自分で皿を洗うのと違って水は繰り返し使うために水道代はむしろかなり減る。そして高温のお湯で洗うため殺菌の面でも仕上げは完璧だ。
そして思わぬ副次効果があったのは、食後に会話の時間が生まれることだ。皿洗いをしていると自分がキッチン、家内がリビングと離れてしまい、そこで会話がとぎれてしまうのだが、食洗機が皿洗いをしてくれるようになると、すぐにリビングに戻ってコーヒーを飲みながら会話を続けることができる。