寿命を画期的に延ばす物質が発見、日本で普及始まる…がん・認知症リスク低減にも期待
今後30年間で、私たちの生活は激変するといわれている。
昨今、AI(人工知能)の進歩が注目され、AIが囲碁の世界チャンピオンに勝ったことも大きなニュースとなった。人間の知能を超えたAIによって、働き方が大きく変わることも予想されている。
また、エネルギー分野でも再生可能エネルギーが、従来の化石エネルギーや原子力に取って代わりつつある。医療分野でも、iPS細胞に代表されるような再生医療の発展もめざましい。
その医療分野で、近年、急速に注目されているものがある。それが「テロメア」だ。AIなどのテクノロジーは私たちの環境を変えるものだが、テロメアの研究は人間の寿命を延ばす可能性があり、人生観そのものを変えてしまうインパクトを持っている。テロメアは、「いつまでも若々しく長寿でいたい」という人類の長年の夢を実現するかもしれないのだ。
2015年1月4日に放送された『NHKスペシャル ネクストワールド 私たちの未来』では、30年後には「寿命革命」によって人類の平均寿命が100歳に到達するという衝撃的な未来予測が紹介された。さらに17年5月16日に放送された『クローズアップ現代+』(NHK)では、「生命の不思議“テロメア”健康寿命はのばせる!」というテーマで、ノーベル賞生物学者エリザベス・ブラックバーン博士のテロメア研究から、寿命を延ばす方法が紹介され、大きな話題となった。
ブラックバーン博士は、テロメア研究をまとめた著書『The Telomere Effect』を今年1月に出版し、世界的ベストセラーとなっている。同書でも、健康寿命を延ばす方法が紹介されている。いまや、世界的にテロメアは大きなトレンドになっているのだ。
テロメアとは何か
では、テロメアとは、一体何なのだろうか。
テロメアは私たちの体を形づくる細胞の細胞分裂に大きくかかわっている。人間の体内には37兆個の細胞があるといわれ、その細胞の中には遺伝情報を伝える染色体がある。この染色体の端にあるのがテロメアである。
細胞分裂するごとにテロメアが短く減っていき、50~60回分裂すると、それ以上テロメアが短くならない限界に達する。細胞分裂ができなくなると寿命となり、その後機能を停止する。いわば細胞の老化だ。
回数券のように減っていくことから、テロメアは「命の回数券」と呼ばれるようになった。テロメアの長さを調べれば、寿命を正確に予測することが可能になる。