どいつもこいつも冷静さを欠いている
筆者としては、知恵を絞りアイデアをひねり出せば、上述した3陣営は、もっとスマートに東芝メモリを買収することができると思っている。また東芝本体も、メモリ事業を売却せずとも、生き残る手段はいくらでもあるように思う。
しかし、東芝も、WDも、革新機構及び経産省も、ホンハイも、それぞれ、全員パニックになっているか、面子にかけても負けられないと“ガキのケンカ”をしているか、過去の怨念から復讐の鬼と化しているか、頭に血が上って激怒しており、どいつもこいつも冷静な分析や判断ができない状態にある。
昨年末に東芝の原子力事業で巨額損失が発覚して以降、東芝関係の記事を書き続けている筆者としては、いい加減、食傷気味となっており、最近は呆れ果てながらこの騒動を見続けている。
東芝の売上高におけるストレージ&デバイスの存在
さて、2カ月遅れではあるが、しかも「限定つき適正」という条件付きではあるが、東芝が17年3月期の決算を報告したので、そのデータを基に、さまざまな分析を試みてみよう。東芝の決算資料には、来期18年3月期(17年度)の予測も記載されているので、これも考慮に取り入れたい。
まず、東芝全体の売上高、NANDを含むストレージ&デバイスの売上高、およびそれが東芝全体の売上高に占める割合の推移をグラフにしてみた(図2)。ストレージ&デバイスという事業名は15年度からの呼称で、それ以前は電子デバイスと呼んでいたが、些細なことなので考慮しないことにする。
東芝全体の売上高は、07年度にピーク(7兆6681億円)があり、その後は6兆円台を推移していた。ところが、15年度以降は5兆円前後に低下した。これは、テレビなどの家電事業やPC事業を売却したことによるものだろう。
一方、NANDを含むストレージ&デバイスは、1~2兆円の間を推移しており、平均すると1.5兆円くらいであろう。15年度以降は若干増加傾向にあり、2兆円を視野に入れている。
そして、ストレージ&デバイスが東芝全社の売上高に占める割合は、2000~14年までは、20~26%くらいだったが、15年度以降は30.6→34.9→38.6%と、増加傾向にある。これは、NANDの売上高が増大している上に、その一方で東芝全体の売上高が減少していることが原因であると考えられる。
要するに、東芝全体の売上高のなかでは、NANDを含むストレージ&デバイスの占める割合が増大しつつあるといえる。