現在、世界的にインターネット空間を使って個人や組織などが、特定の価値を取引することが世界的な注目を集めている。すでに、ベンチャー企業などが独自の仮想通貨を発行して資金調達を行う新規仮想通貨公開(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)が増え、一段と仮想通貨が社会に浸透する環境が出現している。ICOの範囲は、企業だけにとどまらない。エストニアは国家としてICOの実施を計画している。個人が自らの価値をアピールし、第3者からの出資を集めようとすることも増えてきた。
わが国にも、そうしたフィンテック・ビジネスの波が押し寄せている。そのなかでも、さまざまな意味で注目を集めているのが、VALU(バリュー)社だ。同社はビットコインを用いて、個人の価値を取引し合うサービスを開始した。しかし、一部では「単に、高値での売り逃げを狙っただけなのではないか」といわれるケースもあるようだ。今後、数々の問題が表面化してくるだろう。
この問題は、今後のフィンテック・ビジネスの展開を考える上でも重要だ。仮想通貨の取引所だったマウントゴックスでの横領事件のような詐欺事件にとどまらず、これから問題が浮上する可能性は高まっているからだ。社会の変革に応じてどのように法整備を進め、同時に新しいビジネスの育成を支えるかは喫緊の課題だ。
注目を集める“VALU”狂想曲
2016年11月1日に設立されたVALU社は、個人が自らの価値をアピールし、第3者からの応援を受けるプラットフォームを運営している。その機能を簡単に説明しておこう。
ユーチューバーをはじめ、さまざまなアイディアや目標を持つ人が、VALUに会員登録を行い、自らの価値(VA、VALU)を登録する。同社はこれをトレーディングカードのようなものと説明している。同社の利用規約には、発行されたVAは株式のようなものとの表記もある。
VAを発行した個人は、同社のシステム上でファンを集めることができる。いわば、応援してくれる人から出資を募るのである。購入したVALUは他の会員に譲渡可能だ。一連の取引はビットコインを介して行われる。
メジャーリーグの選手のカードがファンの間で取引され、希少価値があると考えられるカードの価値が高まるように、画期的な考えなどを持つ発行者のVAには人気が集まる。人気が高まれば、そのVAを欲しいと思う人が増えるはずだ。こうして、特定のインターネット空間のなかで、個人の価値の評価と取引が繰り返されてきた。