北朝鮮、輸入品トップ5が波紋…ピアノは5百台一括購入、監視カメラ20倍増、ゲーム機も
北朝鮮の核実験やミサイル発射実験で、国連安全保障理事会が対北禁輸措置を強めているが、石油や武器などの戦略物資はともかく、生活物資は基本的に禁輸の対象外になっているなかで、北朝鮮が中国から購入している意外な輸出品のトップ5がわかった。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が中国政府の税関調査の内容として報じた。
北朝鮮は輸入全体の85%を中国に頼っており、その額は2015年度で34億7000万ドル(約3817億円)となっている。そのうち、戦略物資を除いた輸出品のナンバー1はゲーム機で、今年6月末までの1年半の間で200万ドルとなっている。
ゲーム機といっても大から小まであるが、デパートのゲーム場などにある大きなものから、パソコンや携帯電話に内在しているコンピューターゲームまですべて含んでいる。とくに、北朝鮮で人気があるゲーム機は「ヤンキーを倒せ」とか、「米軍兵士標的射撃」といったアメリカやアメリカ人が標的になっているゲーム機で、「打倒米帝国主義」という北朝鮮の国策に沿っているようだ。
2位は監視カメラ。北朝鮮は09年から11年の3年間で、8万5570台の監視カメラを中国から輸入しているが、それが今年6月までの1年半の間で、その20倍以上の166万9725台にも輸入台数が激増しているのだ。これは、11年に金正恩体制に入ってから、国民の監視が格段と強化されたためとみられている。
3位は携帯電話だ。北朝鮮では中国製の携帯電話が主流になっているのはよく知られるが、携帯電話の電波送信システムそのものはエジプトの会社が担当しており、携帯端末が中国製となっている。
それも今年に入って急激に増加している。昨年第1四半期では14万4891台だったものが、今年の第2四半期ではほぼ2.5倍の42万6500台も中国から輸入しているのだ。これについて、同紙は専門家の話として「携帯電話が市民に解禁されたのではないか」と報じている。
金正恩委員長のいびつな考え方
4位はアミューズメントパークの遊具となっている。北朝鮮は1974年から2012年までの間に少なくとも新たなアミューズメントパークを建設しているが、そこで設置されるメリーゴーラウンドやジェットコースター、スウィング、射的などの遊具を中国から輸入しているという。その額について、同紙は「不明」としている。
5位が楽器だ。ピアノや、クラリネットなどの管楽器、バイオリンなどの弦楽器などで、やはり同時期の1年半の間で、計6万8670の楽器が中国から輸入されている。そのうち、管楽器300個とピアノ503台が同じ日に納入されており、祝賀行事の演奏のために一回で大量に購入しなければならない事情がありそうだ。
今回トップ5に入った商品は、製造するにはそれほど特別な技術が必要というわけではない。とくに、北朝鮮は弾道ミサイルや原爆や水爆を製造する能力があるのだから、ゲーム機や監視カメラ、携帯電話、遊具や楽器などは製造するには容易だと想像できるものの、それを輸入しているところに、軍事優先、核兵器第一主義の金正恩委員長のいびつな考え方が如実に表れているようだ。
また、ゲーム機や楽器、遊具には「遊び好き」、監視カメラの輸入急増は国民を監視対象にするという金氏の「疑い深い」という性格が、反映されているといえなくもないだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)