宅配便最大手ヤマトホールディングス(以下、ヤマト)が、中期経営計画(以下、中計)を9月28日に発表した。この中計は当初2017年3月期末に発表される予定だったが、半年遅れとなった。遅れた理由は、昨年発覚した大規模な残業代の未払い事件を受けて、2月に組合と宅配便個数の総量規制や残業対策などを合意して、それらの対策を織り込むなどしていたため。
いまや市民の生活インフラとなった宅配だが、その業界最大手に起こった問題だっただけに、“半年遅れの答案”提出に、どんな通信簿をつけることができるのか。
働き方改革に1500億円、原資は値上げで賄う
ヤマトの山内雅喜社長は、中期経営計画の発表会見でいくつもの意欲的な改革計画をぶち上げた。愁眉の課題となっていた「働き方改革」が柱とされ、この分野でネットワーク改善などに1500億円を投資するとした。また、物流施設や車両の更新などへの2000億円の投資も盛り込んだ。
夜間配達専門のドライバーを19年度までに1万人配置し、再配達問題に対しては街中にオープン型宅配ロッカーを増設したりコンビニエンスストアでの受け取り拡大を進め、自宅外での荷物受取比率を10%に高める。これらの施策により、正社員の超過勤務時間を半減させ、パートの超過勤務も「大幅抑制」するとした。
さて、これらの投資は、もちろん宅配料金の増収による。ヤマトの場合、宅配個数は総量規制というかむしろ減量が要請されているので、原資は値上げ分ということになる。
個人顧客の値上げについては、すでに5月の段階で発表されていた。ヤマトの宅急便料金には、個人向けと法人向けがある。個人の料金は荷物の大きさと配達先の組み合わせで料金表が公表されている。関東から関東へは「サイズ60(荷物の3辺の長さの合計が60cmまで)」が756円で、これが最低料金となっている(9月末現在、宅急便コンパクトは別)。この料金は10月1日から840円となった。11%の値上げだ。
アマゾンとの値上げ交渉に成功
ヤマトの場合はしかし、個人客より大口法人顧客との個別交渉料金のほうがよほど同社にとってインパクトがある。法人料金は公表されていないし、それぞれの顧客企業が年間に出す荷物数により個別に設定されている。