ヤマト広報部によれば、出荷数の少ない企業の場合、出入りしているヤマトのセールス・ドライバーがその企業に料金を示し、出荷数が多い企業の場合は、ヤマトの支店の法人営業が交渉に当たって決定するという。
アマゾンのような超大口顧客との価格交渉は、もちろん本社マターとなっているだろう。ヤマトが取り扱った宅急便の個数は、年間18.7億個(17年3月期)だった。そのうち、アマゾン分は3億個程度と推定されている(「週刊文春」<文藝春秋/2017年3月9日号>より)。
私は年初から、「ヤマトの宅急便の増収あるいは個数減対策は、個人客や多くの法人顧客の問題ではない、最大顧客のアマゾンを放棄すれば解決できる」と、指摘してきた。個数ベースで同社の取り扱いシェアの2割近くを占めるアマゾンの単価は250円程度と推定されている(前出「週刊文春」記事より)。17年3月期のヤマト全体の取り扱い単価の平均は559円だったので、平均の半額以下だ。そして、伝統的に交渉下手のヤマトではアマゾンを放逐することなどできないだろう、とも予測してきた。
ところが今回の発表で、アマゾンとの価格交渉は単価400円強とすることで合意した、とあったので、私は虚をつかれた。「山内社長、なかなかやるな」ということだ。アマゾン価格が150円以上引き上げられれば、それだけで450億円の増収となる。さらにアマゾンだけでなく、値上げ交渉を行った大口法人顧客約1000社のうち8割もが値上げに応じた、というではないか。
毎年価格を自動的に上げられる?
さらにヤマトでは、法人価格についてはこれから毎年価格改定を行っていくという。新しい運賃体系では、大口の法人顧客ごとに荷物1個当たりのコスト計算をして、その顧客に対する運賃を算出する。それをもとに個別に交渉して価格設定をし直すという。従来の方式では、一度合意された価格がなかなか改定されず、何年も適用されてきた。
新しいやり方では、いわゆるインデックス方式を採用するという。これは、スタート時の価格を100とすると、毎年の変動係数によりそれを改定していくというものだ。ヤマト側の腹算用としては、上のほうに動いていくことを想定しているのだろう。