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コロナでスタバもドトールも赤字、なぜコメダだけ黒字?“高い客単価”実現の秘密

文=佐久間翔大/A4studio
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コメダ珈琲店のインスタグラムより

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、大手カフェチェーンが軒並み不調のなか、店舗数で業界3位のコメダ珈琲店(以下、コメダ)が黒字を確保したことが話題となった。

 コメダを運営するコメダホールディングスの2021年2月期第3四半期(20年3月~11月)連結決算は、売上収益は前年同期比8.2%減の212億4100万円、純利益は同28.7%減の約28億5500万円と、それぞれ数字を落としながらも黒字を記録している。

 一方で、業界2位のドトールコーヒーショップを運営するドトール・日レスホールディングスの同期連結決算では、ドトールコーヒーグループの売上高が前年同期比28.3%減の434億8000万円で、営業利益は18億9800万円の赤字。スターバックスコーヒージャパンの20年9月期決算(通年)も純利益が赤字になっていることを踏まえると、コメダの健闘ぶりがうかがえる。

 コメダはなぜ赤字とならずに利益を出すことができたのだろうか。外食業界全般に詳しいフードアナリストの重盛高雄氏に話を聞き、コメダの勝因を探った。

2010年代に台頭したコメダを支える独特なFCの仕組み

 コメダ珈琲店の歴史は1968年、愛知県名古屋市に開店した店舗から始まった。93年4月にFC(フランチャイズ)展開を本格化させ、現在は全国47都道府県に900店舗近く展開している。

 2013年4月に国内500店舗を達成以降、14年10月に600店舗、16年8月に700店舗、18年7月に800店舗とここ数年で店舗数を急増させているコメダだが、その理由はどこにあるのだろうか。

「10年代にコメダが多くの支持を得た理由は、安心して利用できる場所として認知されるようになったことと、朝食メニューが好評を博したことの2点が考えられます。

 コメダの店舗数が500を超えた13年は、さまざまなホテルや百貨店のレストランで食品表示の偽装問題が発覚し、社会問題として取り沙汰された年です。コメダは『くつろぐ、いちばんいいところ』を理念として掲げるように、座り心地の良い椅子を用意するなど安心してゆったりくつろげる空間づくりに努めていました。ですので、食事の場所に安心・安全を求める方が増えたことで、よりその存在がフォーカスされたのでしょう。

 また、10年代の後半は夜の時間帯があまり売れなくなり、ファミレスなどが需要拡大のためこぞって朝食メニューに力を入れるようになるという変化が起こりました。そのなかで、厚切りのトーストとゆで卵などの選べるトッピングが楽しめる、ボリューム満点なコメダのモーニングサービスが注目され、朝食目当てのお客さんを獲得していったのです」(重盛氏)

 コメダ独自の戦略としてよく語られるのが、FC(フランチャイズ)店の割合の高さだ。スターバックスコーヒーは約8%、ドトールコーヒーショップは約81%がFC店であるのに対し、コメダは97%がFC店と圧倒的な割合になっており、本社が固定費を負担する直営店が少なかったこともコメダが黒字を確保できた要因とされている。

 さらに、重盛氏によれば、そんなコメダのFCでは、コンビニなどのFCとは一風変わった試みがなされているという。

「一般的なFC展開は本部とFCの上下関係がハッキリとしていますが、コメダのFCは一緒に成長していくビジネスパートナーとして捉えた制度づくりがされていることが特徴的。

 コメダのFCはロイヤリティが1席当たり1500円の固定費で、コメダ社員として経験を積んでから開店できる独立支援制度や、開店に必要な初期費用を一時負担する建築支援制度などが用意されています。半面、独立支援を受けるには1年以上在籍するなどの条件があり、独立支援制度を利用しない場合は50万円払って約3カ月間研修を受ける必要があるなど、オーナーになるためのハードルが少し高く設定されているんです。

 コメダではどこに店舗を建てるのかがある程度FCのオーナーに任されているので、オーナーによっては固定客が見込める、馴染みのある土地に店を構えます。そういった店舗では、コロナ禍でも来客数が落ちず、売上を維持することができているようです」(同)

客単価の違いが他カフェチェーンとの明暗を分けた

 コメダとほかのカフェチェーンの最大の違いは、ビジネスモデルにあると重盛氏は続ける。

「コメダは一定以上の客単価をどのように維持するのかに焦点を当てた、いわば“安売りをしない”ビジネスを展開しています。

 そのため、単純に安いメニューを用意するのではなく、600円や700円といった金額でコスパが良いと思っていただけるような質の高い商品や、数人でシェアすることを前提としたボリュームのある商品を提供しているのです。

 客単価が高いお店ということもあって、年齢層もほかのカフェチェーンと比較すると高めです。昔ながらの喫茶店のようなスタイルなので、高齢者の方々の憩いの場にもなっていますね」(同)

 そんなコメダが今後さらに発展していくには、新規客の開拓が重要になるのだとか。

「居心地の良さを意識した店舗設計や高品質の商品で熱心なファンを獲得したからこそ、コメダはコロナ禍においても赤字になりませんでした。コロナが収束した後は、空いてしまっていた座席を埋めていくための施策が必要となります。そのためのカギとなると思われるのが、季節限定のメニューです。

 以前、コロッケを具材に使用したハンバーガー『グラクロ』が、同じくコロッケを挟んだハンバーガーであるマクドナルドの『グラコロ』との大きさの違いで話題となり、新規客の呼び込みに成功しました。『グラクロ』のように、これまで足を運んだことがない方にも関心を抱かせるような限定メニューを積極的に組み込んでいくようになれば、カフェ業界におけるコメダの地位はより盤石なものになるのではないでしょうか」(同)

 コメダはFCがメインの店舗展開や、客単価の高さを意識したビジネスモデル、くつろぎを与えることにこだわった店舗設計など、かねてからの取り組みが功を奏してコロナ禍においても黒字を維持することができた。

 しかしながら、赤字にはならずとも厳しい情勢下で大打撃を受けたこともまた事実。コロナ禍、あるいは収束後にコメダがどのような戦略を打ち出して利益を上げていくのか注目したい。

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

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