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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

ユニクロ、ネット売上率「たった5%」の意味…信じられない20年前のネット通販論争

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授
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ユニクロ、ネット売上率「たった5%」の意味…信じられない20年前のネット通販論争の画像1ユニクロの店舗(撮影=編集部)

 ユニクロの、日本におけるリアル店舗に対するインターネットでの売上比率は現在5%程度で、今後は30%を目指していくようです。皆さんは、この5%という数字をどのように思いますか。

 これだけスマートフォンが普及している時代において、低すぎると感じる人もいるでしょう。逆に、ユニクロ全体の客数を考えると、5%といえどもかなりの数になるわけで、それほど多くの人が購入しているのかと捉える方もいるかもしれません。しかし筆者は、「確かにそれくらいだろうな」と、妙に納得してしまいました。

 筆者がネットに初めて触れたのは今から25年ほど前で、企業勤めしていた頃の先輩の自宅でした。当時はまだワープロ全盛の時代でしたが、コンピュータに関心の高かったその先輩は、職場でもっとも早くPCやブラウザなど、インターネット環境を整備していました。

 しかし、いざアメリカのサイトに接続しようとしたところ、数十分かかったと記憶しています。はじめは興味津々に画面を眺めていましたが、途中で飽きて炬燵で寝かかっていました。そこまでの時間をかけて辿りついたサイトは、雑誌のPRページだったと思いますが、「あ、そう」という感じでなんの感動もなかったことをよく覚えています。もちろん、再び時間をかけてほかのサイトにアクセスする気など起きるはずもなく、それで終了となりました。

 ところが、その後、ISDN、ケーブル、光回線といった通信の高速化、近年ではスマホの発達により、いつでもネットにアクセスできる環境へと進化してきたわけです。

 ネットの普及当初、ネットによる物販が一般に広く行き渡るようになるかに関しては、意見が分かれていました。批判的な論者は、通信コスト、配送コスト、セキュリティー(詐欺)、五感で現物確認できないといった点を強調していました。

 ネット通販と商品特性に関しても当時は、よく議論されていました。たとえば、ネット通販ともっとも相性がよい商品としては、本やCDが挙げられていました。こうした商品の場合、商品の検索が重要になりますが、ネットショップはリアルの店舗と比較して格段に容易に検索を行うことができます。さらに、本における紙やCDにおけるディスクは、本来なら必要のない単なる媒介物であり、中身は文字や音などのデータですので、100%デジタル化できるため、ダウンロードで事が済みます。

 それに対して服や靴などは、同じサイズでもブランドによって大きさや形が異なることから現物確認が重要となるため、ネット通販にはそぐわないという指摘が圧倒的でした。しかし、現在ではそれがよいかどうかはともかくとして、消費者のなかには返品無料サービスを活用し、複数のサイズを注文して、合わないものはどんどん返品するという購買行動も一般化してきているようです。

 このように考えると、現代のネット通販で購入が困難なのは、写真では表現できない匂いが重要となる香水など、極めて限定的になっていると思われます。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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